高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-054/82page

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くの変化に適応できる知的能力と心理的態度を育成するに当たって,言語教育は複雑な人間関係で言語を用いるうえでの柔軟性を養い,それによって円滑な相互理解と意志の疎通を図り,スムーズな社会適応に役立つことをねらいとすべきであろう。

この意味で,外国語教育は,国語教育とともに言語運用能力を高め,入間関係を豊かにし自己実現を図るために,また,将来の変化に対処する知的心理的適応力を身につけるために重要である。

高等学校における英語教育は,戦前の旧制中学校や高等学校におけるように,上級学校受験を目標として,読み書きの訓練にのみ重点をおくのではなく社会的要請や,生徒のneedsを十分に考慮して,生きたことばの学習であることを強調する必要がある。

読み書く力と,聞き話す力は,内容が高度になるにしたがって異質なものとなるが,基礎的な段階では,正しく聞きとり,発話することができなければ読み書く力をつけることは期待できないはずである。

新しい言語を修得することは,新しい思考形式を獲得することであり,日本人社会の中で日本人的思考の形式を身につけた生徒が英語を学習することによって「閉じられた世界から開かれた世界へ」進出することが可能になるであろう。

2 本県における高等学校(全日制普通科)の英語教育の現状

(1) 履修の状況

すでに述べたように,本県高等学校(全日制普通科)58校(本校51校,分校7校)における英語履修の状況は,「英語A」履修校22のうち,全員が3年間英語Aを履修するのは分校7,僻地の小規模校4,計ll校であり,他の11校では,1年次においてはすべての生徒に「英語B」を履修させ,2年次から「英語B」の履修を継続するものと,「英語A」を選択するものとに分けている。

普通科高校の英語履修において科目の選択にあたり,「英語A」,「英語B」のいづれが適切であるかは生徒の学力の実態に応じて決定すべきであることは当然であるが,入学者選抜学力検査の結果からみると,高校入学者の学力の差はきわめて大きく,普通科ゆえに「英語B」を履修させることは,生徒にとっても,教師にとっても,適切な処置とはいえない。教師の自己満足のために,大学受験という名目のもとに,聞くこと話すことの指導の困難のゆえに,あるいはまた差別をなくすという実態を無視した観念論のために,すべての生徒に「英語B」を履修させているのではないかという懸念がある。

科目の内容と生徒の学力から判断すれば,現在の「英語A」と「英語B」の履修校の割合は逆になるのが望ましいと思われる。普通科高校卒業生のうち,昭和50年4月の調査では36.6%が大学に進学し,また,昭和50年11月の調査では,昭和51年4月に大学進学を希望するものは55・9%であり,普通科高校における英語教育が大学受験準備のために「英語B」を履修させるとすれば,生徒の実態を無視した教師サイドの一方的な授業になってしまうであろう。

(2) 生徒の実態

国民教育といわれる高等学校教育に課せられた最も大きな問題は,学力能力に遅れている生徒に対する適切な指導法の開発研究である。特に英語の学力は,他の教科に比較して個人差が大きく,一せい授業による指導の困難は周知の事実である。

このような現状を,具体的に認識するために,県立高等学校入学老選抜学力検査の成績が県平均を下回るA高校の生徒の実態を参考にとりあげ,高校英語教育改善の一助としたい。


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