高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-073/82page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]

教育をすることを目標に考察が加えられているが,しからば,それらの能力・適性に見合った教科選択コース選択はいかにガイダンスされるべきかが重要な鍵となろう。したがって,その方法を以下に述べてみたい。

(1) いつでも,どこでも,だれもが(全教師)ガイダンスを実践する。

一般にガイダンスという言葉を聞くと,ある特定の教師(スクール・カウンセラー等)が,何か特別相談心理学的技法を身につけたうえで,放課後とか空き時間とかに生徒と話し合うことと考えられてきがちであった。

しかし,我が国においてはスクール・カウンセラー制度はいまだに定着せず,法制化もはたされてはいない現状からいって,全教師が相談担当教師となり,いつでも,どこでも,生徒たちの自己実現に援助していくことが,わが国の高等学校教育の場でのガイダンスのあり方と考えるのが至当であろう。このように考えた場合,学校には職制上の系列があり校務分掌上の流れがある以上,それらとガイダンスの関係分析が必要となることは当然である。以下その点についてのいくつかの考察を述べてみよう。

1) 学校長・教頭とガイダンス

・ 学校長は,学校教育におけるガイダンスの意義と必要性を十分に理解し,校内にこれを普及浸透させること。なお,ガイダンスについての専門的知識は必ずしも必要ではない。配慮とアドバイスがあればよい。

・ 対外的(PTA,教育機関,地域社会)に対しても発言をもち,ガイダンスの意義と必要性を納得のいくように説明し,必要な施設設備とスタッフを獲得できるように,条件の整備を行なうこと。

・ 教頭は,学校長を補佐する一方,教師群のリーダーでもあるので,各教師に対して,ガイダンスについてのアドバイスが必要である。

・ 教務部,生徒指導部,進路指導部等の各部の部長のリーダーとして,各部にガイダンスの実践の方向づけと援助を与える。

2) 教科担任とガイダンス

・ 一般に教科担任としての立場では,生徒のひとりひとりに目を向けて,かれらを指導するのは困難なようにみえるが,教科担任のガイダンスはあくまでも集団のなかで,集団の相互作用をふまえなから,ひとりひとりの個性や能力に即して適応と成長を図ることである。近視や聴力の悪い者へのガイダンス,班別学習,進度のちがいに応じたLearner centerd Lessonなど,授業形態の改善からのアプローチが考えられなければならない。

3) 学級担任とガイダンス

・ ロング・ホーム・ルームショート・ホーム・ルームなどの時間に,生徒の個人的な教科選択の問題,性格上の問題や友人関係,学業上の問題,進路の問題などについて個別指導をする。

・ やや進んだ問題をもつ生徒,他人が一緒にいては適当でない問題をもつ生徒については,あき時間とか放課後にじっくり話し合う。

4) 教科担任とガイダンス

・ 教科主任は,各教科のリーダーであり,自己の教科が生徒の能力・適性とどのように関連づけられるべきかを熟知したうえで,いつでもそのことについて各教科の代表として生徒と話し合う用意をしておくべきである。

5) 学年主任とガイダンス

・ ともすると学年王国をつくりがちな現行の制度を一歩進めて,学年主任会をもうけて広くガイダンスを学校全体の目標にしていくこと。

・ 学級王国的に学級の生徒を扱うことをやめ,担任ひとりの力,見方で偏見的指導になることを防ぐため集団討議で修正し,勘にたよることを排除していくこと。


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。