OHPの活用とTP制作の手びき-125/152page
場合にはなかなかこういう訳にはいかない。上に述べたOHPの利用方法は,目新しいものでもなんでもないが,しかし,順序を追って英文を覚えさせる方法としては,きわめて有効適切である。なお,上の例文は,「授業の中の5分間英会語」(福島県教育センター,英語科講座用資料)から引用した。同資料の中には,上述のような4行程度のきわめて短い英語でのやりとりが,105型のせられている。
(2)わからせる,興味をもたせるためのOHPの利用
TP2は過去完了の導入に用いられた例である。使用教科書は,NEW HORIZON で,対象学年は第3学年である。作成者の福島農蚕高校,五十嵐賢治先生の説明によれば,
ア.Oral Introductiom の段階で,Brazilの首都が,RiodejaneiroからBrasiliaに移った事実を,TP2の表を用いて知らせる。
イ.その表を用いて,現在,現在完了,過去の関連から過去完了を導入する。
ウ.つぎのTPでは,過去完了の例文の練習,さらにそのつぎの過去完了の受身の文へと進む。
とある。日本人にとって,英文の時制は,前置詞および,単数・複数の使い分けと並んで,3大難関である。そこで,時制を理解させる一番手っとり早い方法は,時の流れにしたがって図を書いて示すことである。TP2においては,一番上に左側を過去,右側を現在から未来へということにして簡単な図で示し,その中にRio de JaneiroからBrasiliaへと首都が移っていたことがあらわされている。その図をみせながら,現在→現在完了→過去と進み,最後に過去完了を導入する訳である。首都がRio de JaneiroからBrasiliaに移ったことに目をつけたので,この教材提示は,過去完了時制の説明という点では,まことにもって,適切なものとなった。なお,アンダーラインを引いた部分は,赤ペンで文字を書いてもよい。
TP2
つぎに,ことばをイメージとして定着させる場合にも,OHPが利用できる。例としてdrawとpaintをあげたい。英語の授業で生徒にdrawとpaintの違いをたずねた時,「書く」「描く」「画く」などという訳語がだされた。そこでさらに,「描く」と「画く」はどう違うのだろうかなどという疑問がでてきて,ますますわからなくなったことがある。英語を日本語で置きかえようとすると,時としてそういうことになることがある。TP3,TP4のように,OHPを使って示すと,いっさいのむずかしい議論ぬきで直接理解ということになる。英語のことばが,訳語としてではなく,イメージとして心に定着していくからである。英語の授業では,どうしてもことばだけに頼って,訳してみたり,読んだり,説明したりということになりがちである。しかし教師としては,なるべく多くの視聴覚教具,教材を利用することによって,生徒のmulti-sensesに働きかけたい。
TP3,TP4はその線にそって,絵をOHPを通して利用した
TP3