教師のための統計入門-003/233page
意味があります。
以上,統計ということばの意味について説明しましたが,このほかに,このことばは,統計学の意味にも用いられることがあります。
2. 統計学について
(1) 母集団と標本
統計学について説明するには,その前に,どうしても母集団と標本について説明しておかなければなりません。それで,まず,母集団と標本について説明することにします。
母集団とは,対象とする集団の,個々の要素が共通して持ついくつかの標識のうち,指定された標識の測定値の全体をいい,標本とは,この母集団から,任意に抽出された部分集団のことをいいます。
ここで,任意に抽出されるとは,どの要素が選ばれるのも,全く同じ確率である,という条件のもとに(例えば,くじ引きは,この条件を満たします。)選びだされることを意味します。
例えば,ある日ある時のF市の高校一年男子N人の身長について調べようとする場合,このN人のおのおのの身長を示すN個の測定値の全体が,大きさNの母集団であり,ここから,任意に抽出されたn個の測定値の集まりが,大きさnの標本というわけです。(注)
さて,上の例では,母集団,標本は,身長の測定値の集団でした。ここで,母集団,標本の別なく,ある標識の測定値の集団を,データ,または,資料ということにします。そして,n個の測定値からなるデータを,大きさnのデータということにします。
(注) しかし,ときには,対象とする集団,例えば,ある日ある時のF市の高校1年男子N人全体のことを,実体的母集団,身長を示すN個の測定値全体(これまで,母集団と言ってきたもの)を標識母集団ということがありますが,この本では,便宜上,どちらも単に,母集団とよぶことにします。し