教師のための統計入門-017/233page
は,はじめ平均からのずれの総和,すなわち,偏差の総和を求め,つぎにこれを平均して1人当たりのずれの大きさを求めようとしたんだね。さあ,そうすると,偏差の総和は0であったから,この平均はどうなる。
P4 0を3で割りますから,もちろん0です。
T そうすると,A組の場合,B組の場合はどうなるかな。
P5 偏差の総和はいつでも0ですから,0を平均しても0ですから,どちらの場合も0です。
T うん,そうなんだね。偏差の総和の平均というのは,等しく0になってしまう。だから,平均値のまわりのばらつきの度合いを示すものとしては,これは不合格ということになる。残念だね。考え方は大変良かったんだが,このずれの総和は0になってしまうんだね。プラスとマイナスのずれがあったものなあ。さあ,何かはかにうまい考えはないだろうか。
P1 ……先生,それでは,ずれに絶対値をつけて総和を求めれば良いと思います。そして平均すれば……。
T うん,これはうまいなあ。絶対値をとるかあ。それでは,各自その式をノートに書いてみてください。P1君黒板に書いてください。
P1 { |X1−-X|+|X2−-X|+|X3−-X| } /3
T うん,よくできたね。えらいな。みんなもできたかい。統計学では,これを平均偏差といいます。えらいなあ,みんながこれを発見するなんて……。
P うふん。
T しかしねえ,残念なことに,誠に残念なことに,この平均偏差は,絶対値が入っているために以後の式変形がきゅうくつで,理論的な発展が望めないので,理論上も実用上もあまり使われてはいないのです。
P うわーガックリ。
T このずれを全部プラスに変えるのに,絶対値をとるというアイデアは本当にすばらしかったんだが,実際はそういったところなんです。もう一息,ほかに何かうまいアイデアはありませんか。