教師のための統計入門-054/233page
2. 標本抽出法
標本調査において,重要なことは,標本をどのようにして抽出するか,ということです。ここでは,母集団から,いかにしてその縮図ともいうべき,質の良い標本を抽出するのか,その抽出法について説明します。
まず,標本抽出法は,大きく有意抽出法と,任意抽出法の二つに分けることができます。
有意抽出法というのは,長年の経験や勘や現状の分析などによって,この辺とこの辺とを抽出すれば,全体の良い縮図になっているだろう,という見当をつけて抽出を行うものです。それで,この方法で抽出された標本には,客観性というものが全くなく,片寄りがあるかないかもはっきりしませんので,ここから得られた情報は,簡単に信ずることはできません。
これに対して,任意抽出法というのは,くじ引き方式の抽出法ということができます。すなわち,任意抽出法では,母集団に属するどの要素も,標本として選ばれる確率はみな等しい,という条件のもとに抽出するもので,このようにして選び出された標本を任意標本,無作為標本またはランダムサンプルといいます。(任意標本を単に標本ということもあります。)(P65 注3参照)
任意抽出法の中で,基本となる抽出法は単純任意抽出法で,これはまた,単純無作為抽出法,単純ランダムサンプリングともいわれます。
単純任意抽出法は,くじ引きで,直接母集団から標本を抽出する方法ということができ,この便法として,系統的抽出法(等間隔抽出法ともいいます)やジグザグ抽出法などがあります。
任意抽出法には,このほかに,よく使われるものとしては,層化一段抽出法,集落抽出法,二段抽出法,層化二段抽出法などがありますが,これらはいずれも直接くじ引き(単純任意抽出法)が面どうな場合で,母集団に手を加えてからくじ引きを行う方法ということができます。
ここで,ふつう,「任意抽出法(無作為抽出法)」といえば,それは,「単純任意抽出法」のことを指しますので,注意してください。