教師のための統計入門-080/233page

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(注) 大文字の -X1, -X2, S1, S2 などは,変数として,小文字の x1, x2, s1, s2 などは,実際に抽出された手もとの標本から計算された値として用いていますが,あまり気にしないでお読みください。

次に,この定理を用いた母平均の差の検定について説明します。

いま,二つの母集団 A1, A2 について,その平均値が等しいかどうかを判定したいとします。母集団 A1, A2 についての全データが得られれば,もちろんおのおのの平均値を直接計算して,それらを比べればよいわけですが,ふつうは,そういうわけにはいきません。このような場合に,おのおのの任意標本を手がかりにして,二つの母集団 A1, A2 の平均値に差があるかどうかを判定する方法を,この定理は教えているのです。

まず,仮説 H0:m1=m2 (二つの母平均は等しい)を立てます。この仮説を帰無仮説といいますが,この名は,本当はこの仮説を無に帰したい,否定したい。否定することによって, m1≠m2, すなわち,二つの母平均には差が認められるといいたい。そういう思いを込めて命名されたものです。

なお,このように,まず仮説を立て,これを認める(採択する)のか否定する(棄却する)かを,標本を手がかりにして判断することを,統計的仮説の検定といいます。

さて,まず,帰無仮説 H0:m1=m2 を立てる,といいました。そうしますと, m1−m2=0 ですから,(定理2)より

帰無仮説H0:m1=m2を立てる

は,ほぼ,平均値が 0, 標準偏差が 1 の正規分布をすることがわかります。そこで,もしも,この仮説 m1=m2 が真であれば,二組の標本の平均値 -X1-X2 も大体等しいと考えられますから,その差 -X1-X2 は 0 に近い値になり,それに従って z の値も 0 に近い値になるでしょう。

しかし,もしも,この仮説が真でなければ(偽ならば), m1, m2 のどちらかが大きいわけです。それで,やはり -X1,-X2 のうち,どちらかが大きくなっ


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