教師のための統計入門-082/233page
採択する仮説) H1:m1≠m2 を採択することにするのです。
しかし,この場合,この仮説 H0:m1=m2 は真でないと判定してこれを棄却するといいましたが,それは,100% の確信を持ってくだした判定ではありません。仮説 H0 が真であるときにも,両極端の区間 ( |z| ≧1.96) 内の値は,全然出現しないというのではなく,5% の確率で現れてくるわけです。
z の値が, 0 からへだたった両極端の区間内にある甚だしくずれた値であるから,仮説 H0 を棄却する,という判断は,この5% の真実を切り捨てた判断です。すなわち,この判断には誤りを犯す確率が5% あるというわけです。
標本を手がかりにして,間接的に母集団の性質を調べようとするのですから,どうしても誤差がっきまとい,100% の確信を持った判定はできないのが当然です。しかし,判定の精度は理論的に求められますので,それを明示して判定を下す,というわけなのです。
この誤りを犯す確率のことを,危険率とよび,このときの,両極端の区間のことを,危険率5%の棄却域といいます。そして,危険率5%の棄却域の境界値は, -1.96 と 1.96 で,その棄却域は |z| ≧1.96 というわけです。
同様にして,危険率1%の棄却域の境界値は, -2.58 と 2.58 で,その棄却域は, |z| ≧2.58 ということになります。
また,危険率のことを,有意水準ということもあります。
このことばは,仮説 H0 のもとで, z がどのような値をとれば,「著しい意味のある値」と判定するか,その判定基準ということを意味します。
ところで,「著しい意味のある値」というのは,ふつうは両極端の区間内にある値ということになりますが,この区間内の値は,分布によってその値がいろいろと異なり一定しませんから,あらゆる分布について,まとめて説明するときには,両端合わせたわずかな確率でしか起こらないような値をとったとき,といった方がよいわけです。このことから,この判定基準を,ふつうは,両端