教師のための統計入門-143/233page

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問8 範囲Rから,標準偏差の近似値を求めることができる,と書いてある本がありましたが,どのようにして求めるのですか。

(答え) 一組のデータにおける範囲Rとは,

R=(最大値)-(最小値)

でした。そして,これは,簡単に計算ができるという長所を持つ反面,両極端の2つの値のほかは,中間の値の情報をすべて無視してしまうという短所を持つものであることも基礎編で説明しました。

例えば,大きさが10のデータから範囲を求めるときは,中間の8つの値の情報は無視され,大きさが100のデータから範囲を求めるときは,中間の98の値の情報は無視されることになります。したがって,データの大きさが増すにつれて範囲Rは,標準偏差sにくらべて信頼度の低い値になってきます。

範囲Rと標準偏差との関係

データの
大きさn
d データの
大きさn
d
4 2.1 30 4.1
5 2.3 50 4.5
6 2.5 75 4.8
7 2.7 100 5.0
8 2.8 150 5.3
9 3.0 200 5.5
10 3.1 300 5.8
15 3.5 500 6.1
20 3.7 700 6.3

ところで,この簡単に計算できる範囲から,標準偏差の近似値が求まれば大変便利です。このことについて,次の結果が得られています。

母集団が正規分布をするとき,実用上は,ほぼ左右対称の分布をするときも,大きさnの標本の範囲をRとしますと,母標準偏R差は,σ≒R/dで与えられます。

また,ほぼ,左右対称の分布をする標本の標準偏差をsとしますと,このsについても,s≒R/dが成り立ちます。

例えば,ほぼ左右対称の分布をする標本について,n=284,R=55,としますと,d≒5.8(n=300のときのdで代用),よって,s≒55/5.8≒9.5となります。


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