教師のための統計入門-145/233page

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問10 t 分布や F分布, X2 分布などを用いて,母平均や母分散に関する統計的推論を行うわけですが、これらの分布は,母集団が正規分布をなす,という前提のもとに考えられる標本分布です。ところで,一般に,母集団分布は不明の場合が多いと思うのですが,そのような場合でも,母集団が正規分布をすることを仮定して,これらの分布を用いて,統計的推論を行ってもよいのでしょうか。

(答え) t 分布や F分布, X2 分布は,いずれも母集団が正規分布をなす,という条件のもとに導かれる標本分布ですが,実は,これらの分布を用いて行われる統計的推論は,母集団が正規分布をなす,という前提が少し甘くても,そう大した影響がないことがわかっています。したがって,ふつうは,母集団分布が正規分布をするかどうかは,あまり気にしないで,これらの分布を用いた統計的推論を行っても,そう大した誤りはないのです。ただ,この場合,標本から得られた t や F, X2 などの値は,大まかに見る必要があり,表の境界値に近い値のときには,慎重に判断をくだすようにします。

しかし,精密な結果が要求されるような場合には,与えられたデータを変換するなどして,母集団が正規分布をなす,という前提が満たされるように,工夫することになります。

なお,近年,ノンパラメトリック法が,急激な進歩を示し,各分野で使われるようになってきていますが,ノンパラメトリック法とは,母集団の分布の型にかかわりなく母数の信頼限界をきめたり,統計的仮説の検定をしたりする方法のことです。これについては,参考書22,27をごらんください。


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