教師のための統計入門-214/233page

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対する条件統制は完全にいかないのが普通で,厳密な意味での実験研究ではありません。

したがって,実験後に仮説の効果を判定する場合には,このことをよく頭に入れておいて判定をくだすようにしなければなりません。

1) 一群法では,事前テスト,事後テスト,把持テストの正答率,有効度指数,把持率などの一応客観性のある数値と,平素の授業でのこれらの数値との比較によって,仮説の効果を判定するのがふつうです。

しかし,これらの数値は,いずれも全体的な傾向を示すだけのものですから,これらの数値から個々の児童・生徒のくわしい情報を知ることはできません。それで,これらの数値のほかに,アンケートによる児童・生徒の意識,作文内容,ノートの内容,宿題の提出状況等の変化,または授業中における児童・生徒の観察記録なども勘案して,仮説の効果を判定するようにします。研究報告書には,これらの資料のうち,説得力のあるものをいくつか選んでのせるようにします。

2) 一群法での仮説の効果の判定に際して,平素の授業での資料がなくて比較すべきものがない場合は,その効果を判定しようがありません。しかし,1)で説明したいくつかの数値や観察記録などは,いわば有力な情況証拠であることには違いありませんから,これらをまとめてみることは,それなりに意味のあることです。

この場合,仮説は効果があったようだ,なかったようだ程度の主観的な判定になりますので,以後,何度かの追試を行うような態度が望まれます。

3) 二群法の仮説の効果の検定で,有意差がみられたとしても,真に仮説が有効であったかどうかの判定は,慎重にしなければなりません。

二群法では,仮説以外の条件は,両群で全く同じにしておかなければならなかったわけですが,これが守られていたかどうか,十分検討してから結論を出すべきです。その結果有意差ありと判定できたとしても,その成果を喜ぶ前に,統制群の属する学級に再指導を行い,実験群の属する学級と同じレベルまでに引き上げておかなければなりません。


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