研究資料分類基準G2-04高等学校社会科「現代社会」の研究-153/170page

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資料1) 身体障害者を見る眼

手足の不自由な脳性マヒの人たちと介助者ら8,9人が公衆浴場の脱衣場で「他の客の迷惑になるから」と入浴を断られる事件が川崎市であった。車イスを降り,床に寝て服をぬぎ始めた障害者の1人は若い男客に背中をけられ,介助者の1人もなぐられてけがをした。前々から「客の中に,気持ちが悪いという声がある。大勢で来られては迷惑だ」と浴場側はいい続け,やりとりが続いていたらしい。客の声が本当だとしたら,なんという思いやりのなさだろう。問題はフロヤさんの言葉の裏にある「世間の目」だ。重度身障者の場合は,特別視されて家探しにも苦労するという話をきいた。

「福祉が叫ばれても人々の意識は少しも変わっていない」という障害者の叫びは悲痛だが,わずかな救いは,浴場で「みな同じ人間だよ。一緒に入ったっていいじゃないか」とどなった中年の人がいたことだ。その「同じ人間だ」のせりふで,先日,NHKが放映したBBC制作の番組『ジョーイ』を思い出した。

重症の脳性マヒである主人公のジョーイは56才の実在の人物で,画面にも登場する。小学校で邪魔者扱いにされる幼年期のジョーイを,一歩でも歩かせようと必死になり,カム-オンと叫びながら泣く母親の姿も胸を打つが,物語のやまは,母を失って施設入りした主人公が20代になってはじめてしゃべれるようになるくだりである。
新入りの脳性マヒの青年だけがなせか,ジョーイのもつれる舌の底に潜む言葉をききとるようになる。「川へ,コドモ,行ッタ,楽シカッタ」と昔の思い出を語るのが,彼の最初の言葉だ。ほとばしる一語一語の中から,今までだれにも通じなかった1人の人間のみずみずしい内面があざやかに浮かびあがってくる。そうなんだ,おれだって同じ人間なんだ,という訴えが静かな画面の背後にあった。

(朝日新聞 1976.10,29 天声人語)

資料2) 国籍をめぐる問題(東京地裁判決)

日本国籍の母から生まれながら,父親が外国人であるばかりに子どもに日本国籍を認めない父系優先の国籍法は,憲法14条(法の下の平等)などに反すると,日本在住の無国籍児,米国籍児とその母親が国を相手取り,日本国籍の確認を求めた行政訴訟の判決が30日午後1時から,東京地裁民事三部(佐藤繁裁判長)で言い渡された。佐藤裁判長は「父系優先主義は性別による差別で憲法問題を生じうる。だが,重国籍防止のための有用性や,簡易帰化制度の補完的存在を合わせて考えると,著しく不合理な差別とは断じきれず合憲」として,原告のうち子ども二人の請求をいずれも棄却,母親一人の訴えは却下した。法務省は昨年7月,政府が「婦人に対するあらゆる形態の差別徹廃条約」に署名して以来,国籍法改正の作業に取り組んでいる。この判決は,現行の国籍法を合憲としながら問題点があることを認め改正の方向を法務省,国会へゆだねた形となった。

訴えていたのは,無国籍の東京都港区青山五丁目,シャピロ・エステル・華子ちゃん(3つ)と,米国籍の千葉県流山市野々下,杉山佳保里ちゃん(2つ),母親で日本国籍の悦子さん(34)。

訴えによると,華子ちゃんの父,ヤコブ・シャピロさんは旧満州(中国東北地方).生まれの白系ロシア人で父母ともに無国籍。その後日本に移住,アメリカに渡って,1968年(43年)にアメリカに帰化、日本に帰って日本人女性の千葉照子きんと結婚,華子ちゃんが生まれた。アメリカの国籍取得は,生地


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