研究資料分類基準G2-04高等学校社会科「現代社会」の研究-154/170page
主義が原則だが,国外でアメリカ人と外国人の間に生まれた子が米国籍を継承するには,そのアメリカ人が通算10年以上,アメリカか海外属領に居住していることが要件。一方,日本の国籍法では,母が日本国民でも父方洲国人の場合,子どもは母の日本国籍を継承できない。シャピロさん夫婦は,華子ちゃんを「日本人」として育てようと,生まれて間もなく,東京都港区長に出生届をし,母照子さんの戸籍に入れるよう申し出たが,港区長はこれを拒否。そこで52年12月,東京地裁に提訴した。杉山さんの場合,父親のウィリアム・オーエン・ウェザロールさんは,もともとアメリカ人。佐保里ちゃんが生まれるとウェザロールさん夫婦は日本人として育てようと出生地の群馬県前橋市役所に届けたが,拒否され,53年12月,東京地裁に提訴した。
佐藤裁判長は判決でまず「国籍法二条の父系優先血統主義の規定は父母の性別により差別を設けており,違憲の問題を生じうる」と性差別の存在を認め,それが違憲とまで言えるかについて検討した。
第一に,この規定の趣旨について「外交保護権などをめぐって国際紛争を招きかねない重国籍を防ぐためのもので,韓国をはじめアジア諸国がおおむね父系優先血統主義を採用していることもあり現実的に相当効果のある措置」と認定。だが,その必要性と有用性だけでは諸国における立法主義の推移や現代における両性平等原則の意義と価値に照らして合憲の根拠とするには不十分,とした。
さらに,この規定によると,華子ちゃんのように無国籍となる場合が生じ得る点に注目し,「無国籍は人権保障上好ましくなく,その防止は重国籍防止よりも重要だ」と指摘した。しかし,判決は続けて簡易帰化制度の存在を指摘」これにより差別的不利益が,かなりの範囲において是正されるとの判断を示した。
これらをふまえ佐藤裁判長は,「補完的な簡易帰化制度を伴う限りは立法目的との実質的均衡を欠くとまではいえず,著しく不合理な差別であるとする非難を辛うじて回避しうる」と判断,合憲と結論づけた。
(参考)
・憲法第10条日本国民たる要件は,法律でこれを定める。
・国籍法第2条(出生による国籍の取得)子は,左の場合には,日本国民とする。1 出生の時に父が日本国民である時。
・同第6条左の各号の一に該当する外国人については,法務大臣は,その者が第4条第1号,第2号及び第4号の条件を備えないときでも,帰化を許可することができる。
2 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であった時。
3 父が知れない場合又は国籍を有しない場合において,母が日本国民である時。
4 日本で生まれた場合において,父母がともに知れない時,又は国籍を有しない時。2 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの。
・婦人差別撤廃条約第9条2締約国は,婦人に対し,子の国籍に関し男子と同等の権利を与える。(朝日新聞 1981.3.29)