研究資料分類基準G2-04高等学校社会科「現代社会」の研究-163/170page
16 しかし需要の方は世の中の景気動向によって左右されます。景気のよい時には各企業がビルを新築したり,生産設備を増設したりするため鋼材の需要は増加します。このような時には鋼材の値段は上昇します。反面,不景気になれば企業の設備投資意欲は停滞しますので,鋼材に対する需要は減少し,それに伴って鋼材の価格は値下がりします。
このように需要と供給の変化は物の価格を変化させる基本的な原因になっています。一般的に,財貨'サービスの価格が高ければ(たとえば図2のP1であれば)生産者は,生産量をふやそうとし,消費者はより少なく購入しようとするでしょう。この場合,生産量(供給量)が購入量(需要量)をうわまわると価格は低下します。財貨'サービスの価格が安いときには(たとえば図2のP2のときには),逆のことが起こります。供給量と需要量が一致するまで価格は変動をくりかえし,最終的に需給が一致して市場価格(P)が成立します。
2 市場価格の決定 図3 きゅうりの卸売数量と価格の動き 17 市場の寡占化とその弊害 資本主義経済においては,生産者や消費者の行動のめやすとなるのは,このように市場での自由な売買を通じて成立する価格です。ところが,自由競争がおこなわれている市場機構のもとでは,しだいに企業の大規模化がすすみ,重要な産業で少数の大企業が生産と販売の大半を占めるようになります。このような状態は独占(生産者が完全に単独となった場合)あるいは寡占(生産者が複数であるがきわめて少数の場合)とよばれ,現代においては市場の寡占化が著しく進行しています。
市場の寡占化がすすむと,少数の大企業の間では,価格を引き下げてたがいに競争することが有利でなくなるため,生産量や価格などについて協定をむすんだり(カルテル)して,価格の下落を防いで高い利潤を確保しようとする傾向が強くなります。こうなると,たとえ供給が過剰になっても価格は下がりにくくなり,また,技術の進歩によって生産性が上がり,コストが安くなっても価格が下がらず,その利益が少数の大企業に独占されて社会的に還元されなくなります。
つまり,寡占市場においては,企業間の公正な競争がさまたげられ,価格が市場におけ