研究資料分類基準F-201習熟度別学習研究の手引き-003/96page

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(2)エリート教育に陥り,いわゆる学力の低い生徒が切り捨てられていく傾向になりやすく,主知主義による能力観を生徒にもたせ,人間差別の感情や行動を起こす問題性をもった。

(3)学級,学校内において大切な連帯と協力の生活態度を阻害し,さらにすべての生徒の調和ある人格形成をゆがめる結果をもたらした。」とし,「教師がただたんに教えやすいという観点から,この教育方法を取り上げることは,教育の本質からみても,絶対に改めるべきである。」として,きびしく戒めています。

 従来行われてきた能力別学習と,今日求められている,いわゆる習熟度別学習とは,まず,その動機において違いがあります。今日,高校進学率が94%を越え,生徒の能力が多様化している現状において,学習についてゆけない生徒が増え,学習指導法においても,その対応策が緊急の課題となっています。習熟度別学習は,この課題解決を動機として生まれた指導法の改善策と考えられます。

 習熟度別学習の動機が,以上の点にあるとすれば,その方法は,いわゆる「学力遅進の生徒」をなくすための学習指導法の改善として,学校経営の全体にかかわる体系として,多面的にアプローチすることが必要となります。能力別学習が,このような体系としてとられなかったのは,その動機が,進学対策といった学校経営の一部門と,とられていたからであると思われます。

 習熟度別学習はまた,従来の能力観や学力観の変革を迫るものでもあります。学習指導要領が,「能力別」という言葉をさけて,「習熟の程度」という言葉を用いたのは,いわゆる能力を固定したものとはとらえず,生徒の努力次第で向上する余地のある,流動的な知識や技能の習得,理解,熟練の程度とする視点からです。

 今日の高等学校教育を,希望者全員に開かれた学校と考え(希望者主義),それがただちに,高校全入制や就学の義務づけと結びつく,と考えるのは問題ですが,一方,現在の高校を,一定の能力以上のものだけに開かれた学校と考える(適格者主義)のは,もはや現状に合わない考え方というべきです。したがって,高校教育を通して育成されるべき能力は,たんなる知識力では足りず,


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