研究資料分類基準F-201習熟度別学習研究の手引き-007/96page

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ことになります。それでは,自分の困っていることを誰に相談しているかを,進路,学習,家庭,政治・社会,人生観についてみると,政治・社会,人生観家庭については,「誰にも相談したことがない」とする生徒が,30%を越え,関心の薄いことを示しています。教師に相談するのが適当と思われる進路についても,母親(33.7%),父親(29.6%),友人(15.1%)と続き,担任の教師というのが10,9%に過ぎません。以上の意識調査の結果から,高等学校において,学習指導,学業指導,教育相談などに,何らの努力もなされていないと考えるのは,早計でしょう。

 とかく否定的な答えを出したがる生徒の心理も考慮に入れるべきでしょう。意識調査が,ただちに実態を示すものでないとしても,以上の結果は,学力遅滞についての生徒の心情的な面をよく伝えていると考えられます。認知論的立場からすれば,生徒の行動様式の基礎をなすものは,客観的準拠枠によるよりも,むしろ主観的認知内容によることが多いとされます。その意味で以上の調査は,高等学校における学習指導や生徒指導の改善点が,どこにあるかを示しているといえます。

5 習熟度別学習の研究を体系的にとらえるとしたら………。

 今までの習熟度別学習の研究は,多くの場合,特定の教科(例えば,英語,数学など)の,習熟度別学級編成による研究として行われてきました。しかしこのように,習熟度別学習を狭義に解するのには,疑問があります。

 習熟度別学習が,前述のような能力多様化と,学習不適応の実態をふまえ,その改善を動機として生まれてきたものである限り,それは,全教育課程に及ぶ学習指導法の改善としてとらえるべきです。そうでなければ,所期の目的を達成することは不可能と考えられるからです。従来の能力別学習が学校経営の一部の目的に奉仕するものであったため,今日の「学習についてゆけない生徒をどうするか。」の課題が残されてきたことを思えば,それは明らかです。


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