研究資料分類基準F-201習熟度別学習研究の手引き-077/96page
ず,現実には,進路指導をとりまく多くの問題を抱えております。とくに,学校における進路指導は,しだいにねらいとする教育的機能がうすれ,受験技術の指導や就職あっ旋事務の事務処理に偏ってはいないか,という反省がなされています。そのような意味で,その改善策に次に述べるアメリカのキャリア教育運動の趣旨が,参考になるのではないかと思われます。
(2)キャリア教育「キャリア教育とは,個人の生活の一部を占める職業生活への準備や,学習の機会となるような経験全体のことである。」(キャリア教育の定義1974年,米国教育局)
このキャリア教育は,1971年1月23日,テキサス州ヒューストンで,全米中等学校長協会年次大会の席上,連邦教育局マーランド長官の提唱によって始められ,従来の職業技術教育より広い概念を持つ新しい教育であるとされております。そして,アメリカ国内のみならず,同様の問題に直面する先進諸国では,大きな関心を集めております。
アメリカのキャリア教育運動は,次のような問題が原動力となり引き起こされました。1)青少年の多くは,教育の過程の終了する時点で,はじめて自分の進路について考え出すという現実 2)若年層の失業率,および若年労働者の離職率の上昇 3)現実の社会生活との結びつきがないような"学校教育のための学校"という傾向の強まり 4)大学への進学者数の増加とドロップアウトの続出 5)現在の職業構造の中で大学程度の学歴を必要とする職務の数に比して,はるかに多くの高校生が大学進学を希望していること 6)学校や職場へのスムーズな移行に不可欠な職業上の技能,自己理解や進路決定への態度,労働観などを十分もたないまま,学校を卒業する青少年が多すぎること
これらの問題の多くは,現在のわが国にも見られることであり,その意味でキャリア教育は大変参考になろうかと思われます。このキャリア教育の目標を理解するための一資料として,アメリカの連邦教育局の,キャリア教育モデルを表6にあげてみます。表6のモデルから「キャリア教育とは,初等・中等・高等の成人教育の諸段階で,それぞれの発達段階に応じ