学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-006/222page
第2章 教育相談における心理機制
教育相談において,問題行動の原因を調べていくためには,人間の一般的行動の土台になっている心理学的な基礎理論を明らかにする必要がある。これを説明するために,普通,欲求の理論と適応の理論とが用いられる。
1.基本的欲求と欲求不満
子供は,実にさまざまな欲求を持っているが,そのうちでも,すべての子供に共通して重大と考えられるものを基本的欲求といっている。この基本的欲求が満たされない時,心の中に緊張状態が起こり,そのために適応の障害(社会的にうまくいっているという感じがなくなってくること)があらわれてくる。これを欲求不満(フラストレーション)といっている。
子供の基本的欲求としてどんなものを重視するかは,その子供の発達段階や,育った環境によっても相違があるし,学者の立場によってもかなりの相違がみられる。
次に,多くの臨床心理学者によって採用されている分類に従って,そのあらましを言克明することにする。
(1) 愛情の欲求
兄弟姉妹・教師・友だちなどから愛されたいという欲求は,すべての子供に共通的なものである。このうちでも,親の愛情はもっとも大切なものであり,これが満されないと,いろいろな問題の原因となりやすい。
(2) 社会的承認への欲求
他の人に自分の存在や価値を認めてもらいたいという欲求は,どの子供にとっても大切なものである。その意味で,親・兄弟姉妹・教師・友だちなどからまったく存在を忘れられた子供や,価値を認めてもらえない子供は,いつも欲求不満の状態にあり,問題を起こしやすい。
(3) 成熟の欲求
自分にも何かをりっぱにやりとげることができるという自信,自分もこれをやりとげることができたという喜びの感じを,ときどき,子供に味わわせ