学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-008/222page
われたり,均衡が乱されたりすると,だれもが脅威を感じるので,均衡を取り戻すために,心の中に自動的な「からくり」が起こってくる。これを適応の機制(メカニズム、あるいは自己防衛機制と呼んでいる。
ところで,このような適応の機制は,自己を防衛するために起こるからくりだから,その働きいかんによっては,かえって有効なものと考えられる。しかし,ある場合には,精神衛生上望ましくない機制が働き,次第に,社会的に非難されるような徴候(機制に基づく行動)をあらわすようになり,しまいには,徴候そのものが,永続的になったり,強化されたりした均衡状態におちいり,不適応となってしまうのである。
3.適応機制の分類
子供が,日常,欲求不満を解消するために用いる適応の機制には,さまざまなものがあって,全部をあげて説明することは不可能に近い。また,それを分類するにしても,程度によるもの,形式によるもの,内容によるものなどがあって,学者によって一定していない。
そこで,ここでは,適応機制の代表的なものだけを取りあげて,それが働く形式によって分類を行い,説明を加えることにする。
(1) 現実歪曲の機制
1) 合理化
自分の行動の真の動機をかくして,なんらかの理屈をつけて正当化することで,簡単にいうと,自己欺まんである。
たとえば,学校への遅刻を乗物のせいにしたり,勉強ができないのを遺伝のせいだといって,責任を他に転嫁して,自分をなぐさめているようなことである。
2) 理由づけ
合理化による不満の解消では,かなりこみ入った理由づけが行われるが,「理由づけ」では,それよりずっと単純なこじつけで正当化をはかるのである。
3) 投射(責任転嫁)
自分の行為に対する非難や失敗などを,他人や,他のことに転嫁するこ