学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-010/222page
たとえば,思春期の強い性的エネルギーや攻撃的傾向を,スポーツや音楽,学問,仕事に没頭させ,健全で正常な方向に発散させるようなものである。
(3) 退行の機制
退行とは,子供らしい考え,行為,感じ方に戻ること,つまり,発達の過程において経てきた以前の段階に戻ることであり,一種の逃避である。
新しく弟妹が生まれて,母の愛情が十分受けられなくなった子供が,急に寝小便をしたり,赤ちゃんことばを使うようになったりするのは,その典型的な例である。また,老人が現代の世相を嘆き,「昔はよかった」と,古きよき時代の思い出ばかりを語るのも退行といえる。
一般的にいって,退行は不適応の行動である場合が多い。しかし,大人が休みを利用して子供と一緒になって,遊びを楽しむようなことは,一種の退行ではあるが,毎日の仕事からくる緊張を解くのに効果があって,よい適応といえる。
(4) 逃避の槻制
1) 現実回避(退避)
不満の起こりそうな場所や状況を避け,あるいは近寄らないようにすることである。これが極端な場合は,「人間ぎらい」のような生活を送るようになる。
2) 空想への逃避
現実には欲求の満足が得られない場合に,空想の世界に逃避して,心の安定や満足を得て,緊張を解消することで,いわゆる「白昼夢」がその典型である。
また,友だちのいない子供が「想像の友だち」を空想して,ひとり遊びをしたり,何年も浪人生活をしている受験生が,勉強を忘れて,合格した場面を心にえがいて,灰色の生活をなぐさめたりすることなどもこの例である。
3) 病気への逃避
意識的な仮病とはちがって,現実に耐えられない場合,本当の病気にな