学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-012/222page
そうすると,それまでの仕事を一応取り消して,あらためて始めからやり直すことがある。これが取り消しである。
たとえば,国語の勉強を始めて,どうしてもそれがうまくいかない場合に,せっかく始めたのだから,一たん休んで,そこから先をやればよいのに,どうしても振り出しにかえってやり直してみなければ気がすまないようなことである。
取り消しは,不完全と思われる行為を取り消して,あらためて完全を期してくり返すわけだから,「完全主義(完全癖)」とか,強迫行為につながった機制である。
2) 仕切り
あることについて不満が生じた場合,それはそれとして,その欲求不満の部分だけを心理生活の中で切りはなしてしまい,生活の他の領域で,別の欲求を満足させ,仕切られた部分の不満を意識しないことをいう。
たとえば,学校でいじめられたり,仲間はずれにされる子供が,学校生活をひとつの部分として心理生活から切りはなし,わり切ってしまうようなことである。大人が職場の不満やトラブルを家庭にもちこまないというのも,ひとつの仕切りである。
3) 外面化
欲求不満を,何らかの形で,自分の外にはき出すと気持ちが軽くなるということがある。これは外面化の機制が働いているからである。たとえば,日記や手記をつづるとか,相談を受けることなども,外面化の効果を期待してのことである。
4) 反動形式
ある欲求が行動にあらわれるのを防ぐために,これと正反対の態度をとって行動し,欲求を抑えつけることである。簡単にいうと,内心で欲しいと思っていることと反対のことをすることである。
たとえば,他人に対して憎しみをもっている者が,反対に,極端に親切にしたり,性的な潔癖が,実際は強い'性的欲求をもっていることなどである。