学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-016/222page
第4章 心理検査の活用
1.心理検査の必要性
教育相談においては,まず子供を「理解する」ことからはじまらなければならない。この「理解する」という言葉に,どのような意味をもたせ,どのような立場や,どのような基本的な姿勢をもって臨むかによって,子供,時には,その親や教師などの周囲の者に対する援助・助言や指導の方法が大きく変わってくる。
たとえば,子供を十分理解したうえで,適切な処置をとるためには,いくつかの臨床心理学的な検査を実施し,その所見を得ることがまず重要であると考えている人がいる。また,一方では,これと反対に,そのような検査を実施することは,子供の気持ちを真に理解するのに,なんの役にもたたないであろうと考えている人もいる。
これらのおのおのの理解のしかたは,個有の長所・短所がある。したがって重要なことは,これらをいかに適切に補い合い,あるいは,統合化して用いるのかということである。
教師が,広い視野に立っての総合的理解や予測といったことを考えずに,教育相談に臨むことは,子供を理解しようとする点から考えれば,無責任ではないだろうか。
心理検査は,教師,あるいはカウンセラーにとって,「にしきの御旗」といってよいくらいに,教育相談の中でよく使われる。
特に,初心者ほど,心理検査の結果をすぐに診断に結びつけたがる傾向が強いといわれている。だから,子供に,なんらかのテストを実施して,一定の結果が得られれば,それが診断であると即断し,それに基づいて助言を与えれば相談の仕事は終わったと考えられやすい。
ところで,子供の問題行動の原因は,ひとつではなく,非常に複雑で多元的である。診断を下すにあたっては,あらゆる方法を用いなければならない。
実は,心理検査も,そのひとつのデータにすぎないことを忘れてはならない。