学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-111/222page

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7〜9月一みんなと一緒に学習に参加するようになり,友人もふえる。

  10月一動作に活発さがみえ,表情にも笑みがみられる。

11〜12月一みんなの前で話すようになる。

(8) 考察

 1) 遊戯療法による援助が,自分自身で行動することのすばらしさと,喜びにつながり,本人の不安や緊張を和らげながら,自発的行動の拡大や学校生活への積極的な参加へと有効に働いた。

 2) 子供がとりつかれた緘黙の心因の中に,情緒的なゆとりのある父子関係の乏しさがあったが,父親とのカウンセリングによって,仕事一途のまじめ一方の態度から,あたたかみのある親子関係が成立し,本人との接触が多くなった。また,母親も養育態度のまずさに気づき,厳格な生き方や圧力かけをやめ,子供を理解する態度がみられるようになった。このような両親の態度の変容が,本人の心理的な安定と社会性の育成に効果的であったものと考えられる。

 3) 学級担任との情報交換を密にして,家庭,学校,当センターの指導方針に一貫性をもたせたことと,学級担任が,学習の結果よりも本人との信頼関係を深めることを中心に,情緒の安定を図りながら,じっくりと取り組み,本人を特別視することなく援助してくれたことが立ち直りに大いに役立ったものと思う。

以上三つの面からの援助指導を試みた実例であるが,場面緘黙の指導にあたっては,遊戯療法や親のカウンセリングも大事であるが,学校生活への適応を考えると,子供に接する教師の態度が重要な役目を果たしているといえる。教師のあり方しだいで,心を開くこともあり閉ざすこともある。子供へどんな働きかけをするかが治療的効果を左右するといってよいであろう。


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