学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-112/222page

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5.事例 (2)

◆主訴を理解するために 一家庭内暴力一

最近,校内暴力や家庭内暴力が増えつつあり,マスコミ等でも報道され社会的な問題となっている。一般に「家庭内暴力」という場合,家族集団の中で誰が誰に対しての暴力かということで広くとらえられているが,ここでは限定的に使われ注目されている,「子が親に対する暴力」としてとらえることにする。

家庭内暴力は家庭内でだけみられる現象で,よほどのことがないと外部には出にくいものであり,個々のケースによって,原因もさまざまであり対応のしかたもむずかしいとされている。また,実際におこっていても表面化されない場合も相当数あり,的確に原因,背景,問題点をつかむことも困難であるが,一般的な傾向と対策等についてふれてみたい。

(1) 子供の特徴

警視庁の江幡玲子氏は,家庭内暴力をおこす子供の特徴として,

 1) 外では良い子で他の子供と同じぐらい問題がないようにみえるのに,家の中だけで乱暴する。したがって,第三者からみれば問題のない良い子なのである。しかし,対人関係のまずさ,積極性,自発性の乏しさなどからみて家庭の外にあっては実は問題児なのである。

 2) 比較的優等生かそれに近い勉強のできる子供である。しかし,かつては成績も良く優等生であったかもしれないが,環境が変わり,その中で思うように成績が上がらなかったり,壁にぶつかって成績が下降してきたり,意欲をなくして勉強をしなくなったりして挫折を感じている。

 3) いわゆる非行的要件が外では考えられない。しかし,生活態度の乱れと結びついた反社会的非行も考えられるが,非社会性が案外顕著にみられる。等を指摘している。

これらのことは,家庭内暴力をおこす子供の特徴ということだけではなく,登校拒否,自殺,シンナー吸引など,神経症的行動や非社会的行動をおこす子供と同様の傾向を示しており,動機や対象が異なっているものの基本的には同じ行動の原理によるものであるといってよい。


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