学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-147/222page

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12章 事例研究のすすめ方

1.事例研究の必要性

よく,抽象的に,非行や登校拒否の指導をどうしたらよいかと質問をされたり,2〜3分で問題行動の説明をうけた後で,指導の手がかりを求められたりすることがある。2〜3分間程度の問題の概要をきいただけで,その子供のための指導方針はたてられるものではない。

そこで,「その子について,もっと知りたいのですが……本人の気持ちや,周囲の人のその子に対する見方,保護者の養育態度なども,もう少しくわしくわからないと……」というようになるのが,教育相談に経験のある教師のとる態度であると思う。

一般に,授業をやっていると,自分では子供一人ひとりを理解して指導しているつもりになっているが,それはまったく表面的な現象だけを理解していることにすぎないことも多いのである。ひとりの子供が,なぜいつも乱暴や反抗ばかりするのか。いくら注意しても直らないのか。その原因や子供の心理を理解でき,指導の手をのばして効果をあげることができた時,はじめて,ひとりの子供を理解しえたということができよう。

だから,事例研究は,目の前にいるひとりの子供の行動の意味や成因を,もっと深く知りたいという関心からはじまり,なんとかその子供の問題を解決してやろうとする愛情と意欲から出発するのである。

2.事例研究の2つのせまり方

ひとりの子供について,もっと深く理解したいといっても,何をどう知りたいかによって,事例研究のすすめ方は変わってくる。

(1) 臨床的・客観的な方法

これは事例研究のオーソドックスなものである。問題行動の原因を理解するために,必要に応じて,生育歴や家庭環境,親子関係,行動や性格の記録面接やテストの資料などを収集し,総合的な解釈(仮説)をして,指導方針を立て,的確な指導をしようとする方法である。


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