学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-210/222page
自己(self)
マーフィー(G,Murphy)によれば「個人に知られた個人」(The self is the individual as known to the individual)が自己であり,意識され,経験された自分のことをいう。意識され,経験された個人の側面としてサイモンズ(P・M,Symons)は, (1)いかに自己を認知しているか, (2)いかに自己について考えているか, (3)いかに自己を価値づけているか, (4)自己を上向かせ,防衛するために,いかなる行動を企図しているか,等をあげている。
(1) 自己一致……その時々の状況,条件によって行動や判断が支配されることなく,目標に向かって統制され,統一のある行動,考えることが矛盾なく調和していることをいうが,古くはレッキー(P,Lecky)の提出した概念であり,それをロジャーズ(Rogers)が再評価し,人格理論の基礎概念として確立した。
(2) 自己顕示傾向……一般に,社会生活において,他に対して自己を著しくきわだたせて見せようとすることをいう。狭義には,シュナイダー(K・Schneider)によって示された精神病質人格の一つである。きわめて虚栄心の強い性格,即ち,自己顕示性病質人格をさすことがある。定義には,人間を含めて動物の性行動の異性を引きつけるための挑発的行動特性(誇示,ディスプレー)を示す語として用いられる。
(3) 自己指導(Self direction)……自己指示と訳されることもあり,来談者中心的カウンセリングにおいて強調されている概念で,自己自身および自己の行動について責任をとれる能力あるいは独立性をいい,その前提として,自分をうけいれ(自己受容),自分を知る(自己洞察)ことができる能力が必要であろう。
(4) 自己存在感……自分で自分自身の存在を感じ,考えていることで,自分自身を構造を持った全体として認知していることをいう。