理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-020/139page
(2)一定の放射能をもつ線源の,崩壊速度に関する統計的変動
試料を,一定時間毎に連続して計測した場合,統計理論でいうところのバラツキを伴う。
崩壊速度のランダム性のため,個々の試料の真の計数率というものはあり得ないので,計数率はその平均値をとることになる。
実際に,この平均計数率の正確な値を測定するには,カウント数を多くとらなければならない。計測時間を1分とした場合,20回以上測定し毎分当りの平均計数をとる。また短時間多数回計測と,長時間1回の計測とはどう違うのかという疑問があろう。これは,統計的に差はないのであるが,計測の誤差や操作のミスなどがあった場合見逃がす恐れがあるので,最低3回程度に分けなければならない。計測中の種々の条件は,すべて記録し,途中で変えてはいけない。
◎線源について
G―M用線源……日本アイソトープ協会(JRIA)資料より
β線源…90Sr−90Y 0.1μci (JDB―351)
204Tl 0.1μci (JDB―251)
147Pm 0.1μci (JDB―251)
γ線源 60Co 1μci (JDE―631)
133Ba 1μci (JDE―631)
137Cs 1μci (JDE―631)
入手可能な線源例を上げたが,まだ数種は出ているので利用できる。
(3)β粒子の磁束による偏向を調べる。
β粒子が負電荷をもつことから,磁束の強さにより偏向角が大きくなることを調べ,フレミング左手の法則が成立することを確かめる。
1)(図2)のような位置にG―M管,コリメート板2枚,β線源を配置する。
2)磁束Bを0にしコリメート板を左右に動かし,計数率の最大になる位置に固定する。
3)磁石はU型のものを用い,磁束の強弱はG―M管と線源を結ぶ直線(線束中心)に対し,垂直な面上に磁束が作用するよう,磁石を移動できるようにする。
4)G―M管を線束に対して垂直方向に移動させ,計数率を調べる。最大位置を求めれば,β粒子の偏向がわかる。偏向させた場合,β粒子のエネルギー(KE)に違いがあり,曲率は各々の粒子で異なるので,磁束 B=0 のときと同程度の計数率にはならない。従って,平均偏向角度には,きちんとした定量的な意味を持たせることは困難である。(図3)
図2
図3