理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-021/139page
(4)βrayと作質の相互作用を調べる。
どんな種類の放射線でも,物質中を通るときには相互作用がある。特に,β線との相互作用においては,主に軌道電子との衝突で運動エネルギーを失い,最終的には吸収されてしまう。線源と, G―M 管窓との間に阻止物質を置いた場合,物質の厚さが,ある一定の厚さになるまでは,指数関数的に減少することが,実験的に知られている。しかし,この厚さに達すると,吸収の度合が急激に増加して完全に止まる。
吸収曲線を得るには,横軸に表面密度〔mg/cm2〕で吸収板の厚さをとり,対数目盛の縦軸には計数率をとる。そのときに,バックグラウンドを差し引くことを忘れないようにする。曲線の延長は,最大飛程Rを表わす。(図4)
これから,βrayの最大エネルギーは,実験的に次式に代入して求められる。
最大エネルギーE〔MeV〕=R+0.133〔g/cm2〕/ 0.543〔g/cm2MeV〕……*(1)
図4
1) G―M管窓と線源を 6cm 程度に離し,アルミニウム吸収板を間に固定する。
事前に,アルミ板の表面密度を求めておき,厚さは2枚,3枚と重ねて変化させ,計測する。
2)与えた式で,最大エネルギーを求める。
3) G―M 管の窓などによる吸収での補正は,厚さの小さい部分の曲がりから判定することが可能であるが,特に深く入りこむ必要はない。また,最大飛程を越しても計数は 0 に近づいてはいかないが,これは吸収坂中で発生した制動放射による X線によるものであり,荷電粒子と吸収材が,原子核との相互作用で放出されるものである。
(5)βrayの後方散乱を調べる。
β粒子は,物質中を通過する場合,物質の原子核あるいは電子との衝突によって偏向,散乱をうけ,それを繰り返すうちに,あるものは初めの飛行方向逆向きに進む。これを後方散乱という。
物質の厚さが増すと,後方散乱粒子の数は増大するが,ある厚さで一定数となる。(図5)
後方散乱が飽和に達するこの厚さは,同じ物質中でのβ粒子の最大飛程の約 1/5 *(2) である。例えば,90Yのβ粒子最大飛程が=1,000〔mg/cm2〕であるから 200〔mg/cm2〕程度で後方散乱することが知られている。
図5
1)図6のように配置して測定する。線源から出るβ粒子の進行する向きに対して,π以下の角度にしたものを測定するのは計数を容易にするためである。完全な後方散乱のみを計測するわけではないが,これを利用した厚さ計の原理などの理解の助けになろう。
2)吸収板の厚さを変えて計測する。
3)データを表にし,グラフのように処理する。
*(1) 東北大学金属材料研究所 鈴木進教授の実験データによる。
*(2) 上に同じ