理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-031/139page

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 2)実験結果の例と考察

  ア 自作の装置と市販のアダプターの塩素吸着度を比較する。
  イ 考察
    アのグラフから,自作装置の場合は,流量 500ml/min においてもかなりの塩素が吸着されることがわかる。また,流量が多くなるほど,残留する塩素の量が多くなることが確認される。
    この実験の他に,活性炭の量と遊離塩素の吸着量の関係,活性炭の粒子の大きさと吸着量の関係,冷蔵庫用消臭剤の中の活性炭の塩素の吸着の度合いなどを調べる実験も理科2の実験として適当と考える。

  活性炭による塩素の吸着と流量
活性炭による塩素の吸着と流量

(3)チオ硫酸ナトリウムによる塩素の分解

 1)実験方法

  ア 水道水中の残留塩素を測定し,この水道水 1l 中に含まれる塩素を分解するのに要するチオ硫酸ナトリウムの量を算出する。
   イオン反応式(無機化学 千谷利三による)
   S2O32− + 4Cl + 5H2O → 2SO42− + 8Cl+ 10H
  イ 1/1000Mのチオ硫酸ナトリウムの溶液をつくり,上記の計算量に相当するチオ硫酸ナトリウム溶液を滴加する。
  ウ 上記イオン反応式による計算量のチオ硫酸ナトリウム溶液で,塩素が完全に分解したかどうかを確認する。

 2)実験結果の例と考察

  ア 原水中の残留素の濃度が 0.2PPM の場合,この水道水 1l の塩素を分解するのに要するチオ硫酸ナトリウムのモル数は 7.0×10−7 モルとなる。したがって,このモル数に対する1/1000Mのチオ硫酸ナトリウムの体積は 0.70ml となる。
  イ 計算量のチオ硫酸ナトリウム溶液を加えた後も残留塩素が認められる。したがって,完全に塩素を分解させるためには,計算量以上のチオ硫酸ナトリウムを加える必要がある。この理由としては,原水中の残留塩素測定の誤差,1/1000Mのチオ硫酸ナトリウム溶液を調製するときの誤差などが考えられる。その他,塩素の希薄溶液であるため,酸化力が弱く,反応が上記のイオン反応式で示されるようには起らなかったものと考えられる。このことは,ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応式からも推測される。

(5)日光の照射による

 1)実験方法

  ア 500ml のビーカーに水道水を 500ml とり,屋外に放置する。放置後10分(曇天の場合は30分)ごとに残留塩素を測定する。
  イ アの実験は,快晴の日,曇りの日等,気象条件の異なる日についても行う。


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