理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-041/139page

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9.シダの前葉体の培養と観察

1 ねらい

 ワラビやゼンマイなどのシダ植物が胞子でふえることはよく知られていても,胞子が発芽してできる前葉体の存在はあまり知られていない。野外で前葉体をさがしても,胞子体にくらべてあまりにも小さいため,見つからないことが多い。
 植物の世代交代を理解させるうえで重要なシダ植物の胞子をいろいろな培養条件で発芽させて,前葉体の継続観察を行う。

2 準備

 小型シャーレ,ルーペ,柄付針,検鏡用具(※双眼実体顕微鏡があると便利〕,寒天末,ハイポネックス(園芸用化学肥料),サランラップ,蒸し器(圧力なべ),薬包紙,
 ※ 生徒用顕微鏡に,×4の対物レンズをつけ,落射照明で検鏡してもよい。4×10がよい。

3 方法

(1)胞子のとり方

  8月中旬より9月上旬には各種のシダの胞子を採集できる。イヌワラビ類などは,夏の間,つぎからつぎへと葉を出すので胞子の完熟期の期間が長い。初心者は胞子の飛び出してしまった葉を採集しやすいので注意を要する。胞子が入っているかどうかはルーペを用いるとすぐわかるので,野外に出かけるときには必ず携行するとよい。
  胞子の完熟期の目安としては,中の胞子の色と関係なく,胞子のうが黒く色づいて光沢をもった時をえらぶとよい。胞子のついた複葉や羽片を白い紙(ペーパータオルやザラ紙)にはさみ室内で2〜3日自然乾燥すると胞子のうが破れて胞子は白い紙についている。
  胞子を保存する場合は薬包紙に包み,冷蔵庫で保存する。低温と乾燥が大切である。発芽率は年々低下するので,毎年新しい胞子を使う。スギナやゼンマイのように胞子内に葉緑体をもっている場合は,発芽力がすぐに低下するので,1週間以内に播かなければならない。

(2)培養液のつくり方

  ハイポネックス lg を水 1l にとかす。クノップ液を2〜3倍に薄めて用いる方法もある。

(3)培地のつくり方

  前葉体を育てる培地は次のようなものがあり,それぞれ長短がある。各1個を用意する。
 1)ミズゴケ培地 成熟した前葉体を得るにはよいが,初期発生の観察には不便である。シャーレに,ミズゴケを密に敷き培養液に浸して胞子を播く。サランラップをかぶせるか,ふたをするかして発芽させる。光条件が一様でないので発育が不揃いになるが,かえって観察には便利な場合もある。
 2)寒天培地 初期発生の観察に便利で,胞子密度も調べやすい。しかし,カビや藻類の発生は水栽培にくらべ多い。培養液 1l に寒天末 15〜20g をとかして加熱後,シャーレに6〜7ミリの厚さに入れる。
 3)水栽培地 初期発生のようすをスライドガラスにとりだし観察するのに便利である。カビや藻類の発生もほとんどない。しかし,胞子が凝集しやすく前葉体が大きくなると高密度になるので観察に不便である。また,胞子が水の揺れで動くため、発芽方向の研究には不向きである。


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