理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-042/139page

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(4)胞子のまき方

  胞子の播き方は,いろいろ工夫されているが,要するに培地に均一に,高密度にならぬように播けばよい。胞子のついた紙を切りとり(2×6cm位)シャーレの10〜15cm上方より軽く指で叩くか,小筆に胞子を付けて同様に軽く叩くと均一に播くことができる。

(5)培養の条件

  胞子をまいた各培地は,直射日光をさけて窓際に置く。発芽後は 1,000〜2,500Lux のところに置く。発芽後,長い間南側の窓際に置くと,単細胞性緑藻が生えて前葉体の生育が妨げられるので,北側の窓際かやや光の弱い所に置くとよい。気温の高い夏には特に注意が必要である。寒天培地やミズゴケ培地は乾燥しないように注意する。室温15〜25℃で十分生育する。

(6)観察のしかた

  水栽培地より,胞子を柄付針に付着させて,あらかじめ水滴を落してあるスライドガラスにとり,カバーガラスをかけて検鏡する。寒天培地では,発芽の方向などの観察を行う。前葉体が大きくなってからは,柄付針やピンセットで前葉体をとりだして検鏡する。双眼実体顕微鏡下では,培地を直接検鏡してよい。観察のテーマとして,次のようなことを調べさせるとよい。
・各実験区ごとの生育比較 ・細胞内の葉緑体の配置と光の関係(前葉体)
  造精器は球型で透明のため,見つけにくい。造卵器はやや細長く,ハート型の中心部にできる。
  前葉体の培養で胞子を濃密にまいたり,光を制限してやると,ハート型にならずシャモジ型となり,造精器のみつける雄性前葉体となることがある。
  精子の観察は,前葉体をスライドガラスにとりカバーガラスをかけ,押し広げるようにすると造精器がつぶれ,成熟していれば精子が泳ぎ出す。精子の動きを止めるには,プレパラートをアルコールランプで10〜20秒加熱する。染色する時は,カルノア液で5分固定後,ピロニン・メチルグリーンで行う。造卵器は赤〜紫色,仮根や造精器は緑色となり雌雄生殖器の区別は容易である。

4 結果と考察

  前葉体の生育は,培養条件によって異なる。恒温装置が使用できない学校も多いので,室温で培養した結果をとりあげた。胞子は,イヌワラビ,ワラビ,ハリガネワラビなどを使用したが,大きなちがいはない。ここでは,イヌワラビの水栽培を中心に述べる。
  胞子の採集地,福島市信夫山 57.8.21 イヌワラビ,ハリガネワラビ,他に5種。
8月23日   胞子をまく(水裁培,寒天,ミズゴケの各培地)南窓際より1mの所に置く。
8月26日(3日) 胞子の殻が破れ,内部が緑色に見える。仮根の出たもの約10%(図1)
8月28日(5日) 60〜80%発芽。生育のはやいものは2細胞期となっている。
8月30日(7日) 大部分の胞子は,2〜3細胞期となっている。分裂方向もいろいろである。
9月2日(10日) 仮根が2本で3〜4細胞期のものが多い。(図2)。寒天培地のものはまっすぐに伸びている。水栽培では,分裂方向に変化が多い。
9月7日(15日) 二次元分裂(横方向)が見られる。いろいろなタイプが見られる(図3)
9月12日(20日)水栽培の発育は,7〜8細胞の糸状体で,仮根も2本が多い。(図4)、
 シャモジ型(14〜16細胞)となって,垂直に立つ傾向が見られる。寒天培地は,シャモジ型が多く,水栽培より成績がよい。発達したものは30〜40細胞のハート型となっている。
 ミズゴケ培地は,糸状体が多く,二つに枝分れしたものも多い。光不足が原因であろう。


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