理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-066/139page
4 整理法及び種の同定法
(1)現地でテトロンゴースで包んだ内容物をすべてバットにあける。
(2)使用済の別のゴースを広げ,バットを軽くゆすりながら傾け,浮遊物を流し入れる。再び水を張り何度か同じ操作を繰り返す。
(3)砂,礫の残ったバットより,ルーペを用いて流れ出なかった生物体やトビケラの巣などを拾い出す。
(4)こし取った採集物より,種類ごとにシャーレ又は管瓶に移し,10% ホルマリン液を加え,記入用紙に採集年月日,調査地点,番号など鉛筆書きにして封入して保存する。
(5)保存しておいた採集物は,ルーペなどを用いて,動物群を目程度,又は似たもの程度に注目し,用意した小型シャーレに類別し,更に,実体顕微鏡と検索表で属,種レベルまで同定する。各人が専門を決めて行うとよい。
(6)同じ種と同定した個体は,記録用紙に学名・和名を鉛筆書きして入れて保存する。
5 結果と考察(水質判定法)
水生昆虫による水質判定は,その根底に,“よい条件のところは種類数が多く,条件が片寄るほど種類数は減り,その種類数の個体数は多くなる”という生熊学的な原則(Thienemann)がある。
Beckは,無セキツイ動物を汚濁に耐えられない種類(貧腐水性水域に属するもの)と汚濁に耐えうる種類(中腐水性から強腐水性水域に属するもの)に分け,前者を,A非汚濁性種(intolerant species),後者を,B汚濁性種(tolerant species)としている。「2A+B」の数字を,汚濁の生物指数(biotic index)としている。
生物指数による水域の階級分けは次の通りである。(Beck−Tsuda法)
2A+B 階級 20〜
11〜19
6〜10
0〜5きれい
やや汚濁
かなり汚濁
きわめて汚濁(1)汚濁耐性種,非耐性種一覧表から,分類(同定)した種がどれであるかを判定する。カワゲラ目,トビケラ目,カゲロウ目を非耐性種とし,その他を耐性種としてもよい。
(2)耐性種の種類数,非耐性種の種類数より2A+Bを求める。
6 留意点
(1)調査面積,川底の状態など,水質以外の条件を一定にして,2ヶ所の試料でそれぞれの生物指数を算出し,大きいほうの値をとるのがよい。
(2)採集方法が正しく行われたかどうか,分類や同定について正確だったかチェックをして総合的に水質判断をするのがのぞましい。