理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-069/139page

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3 河原の植物を調べる

1 ねらい

 洪水によって大きな破壊作用を受け侵蝕や,礫の堆積など変化の多い悪条件下の河原で,これに適応した植物のくらしがどのように行われていくかを調べてみる。県内では海からは遠くても,河原が近くにある学校は多い。河原での観察,実習を通じて,身近な自然について学び,あわせて河川の現状を見直しながら,自然を大切にしていくことを学習させたい。

2 準備

 巻き尺(50〜100m),折れ尺,方形枠,ルーペ(10〜20倍),数取器,植物図鑑,記録用紙及び用具,地図,カメラ,胴乱(種名のわからないものなどを持ち帰る),長袖シャツ,長ズボン,手袋(軍手がよい),ゴム長靴(キャラバンシューズなど),帽子などで,泥湿地,やぶの中を歩ける用意をしていく)

3 調査の方法

(1)標準となる調査区を設ける。
  堤防の上などから,河原全体の地形と植物群落の状態を観察する。スケッチしたり写真などで記録して,河原全体の傾向をつかむ。
(2)河原のような広い範囲の群落では,帯状法を用いて調査を行うとよい。小さい方形区を一直線に並べ,その各々について順次,方形測定を行っていくので測定される範囲が帯状になる。基線のとり方を考え,一地域でこのベルトを数本とると群落の変化をよく調査することができる。
(3)一般には汀線から内陸方向(堤防,土手)まで直角に巻尺をはり,測定の基線とする。
(4)巻尺の各ポイント(設定場所により間隔をきめておく)に方形枠をおき,枠内に出現する全植物の種名,被度,密度,高さなどを測定する。地下部の形,地上部の生活形なども観察しておく。
(5)河原の土地の状況を観察し,測定区域の高低や土質(砂地,礫土,泥土,壌土)などを調べておく。
(6)河川の流れについても目を向け,侵蝕と堆積による地形の状態を観察しておく。
(7)河川の流速を測ったり,洪水による水位の変化などについても調べておく。
(8)堤防の改修,護岸工事,砂利の採取などの人為的な変化が,河原の安定にどのような影響をあたえているかについても注意しておく。

4 結果と考察

 福島市内を流れる松川流域河岸の植物群落の調査結果を示しておく。調査は下流域と中流域にわけて行った。下流域は国道4号線松川橋から西約400m 付近の河原で,汀線から北側堤防まで約30m の基線をとり,5m 間隔で方形枠をおき出現植物の帯状測定を行った。中流域は南沢又の新松川橋から西約500m 付近の河原で調査を行った。汀線から約100m の基線をおき,20m 間隔での方形測定を行った。調査は同一地点で1981年6月9日と7月22日の2回実施し,結果は図1〜6にまとめた。
 松川河岸の植物群落の変化を,下・中流域にわけ帯状測定によって調査したが,この河原の植物群落そのものが測定しやすく,結果がたいへんわかりやすいものであった。下・中流域での植生のちがい,地形,土質による生育の差異,優占種の変化などが,はっきりと区別できるし,6月から7月にかけての約40日間の短かい期間でも,植生の季節的変化の状態も調査できた。学校附近に適当な河原があれば,地学的内容をと


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