理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-092/139page
11 海食洞を調べる
1 ねらい
海食洞は,海水の運動エネルギーによって海水面付近に形成される浸食地形である。この洞穴の形態・水平分布および垂直分布などを調べ,海水の浸食作用のようす,海食洞が形成された後にそれが分布する地域が受けた地盤運動のようすを考察させる。
2 準備
測量器材(平板・ハンギングコンパス・クリノメーターなど),巻尺,方眼紙,地形図,地質図
3 実習
(1)海食洞の水平分布を調べる。
・海食洞の分布を実地に調査し,それを地形図上にプロットする。
(海食洞の新しいものは,海岸線に沿って分布することが多いが,やや古い時期のものは海岸平野に接する山地などにも見られることがある。人工洞との区分に留意して調査することが必要である。)
・海食洞が形成されている地点での海水の運動のようす,洞周辺の地質構造などについても調査する。
(2)海食洞の垂直分布を測量によって調べる。
・海食洞の洞床部の標高を測量する。(海食洞のある地点に最も近い基準点をみつけ,そこから精度の高い測量をおこなう。)
・測量結果をもとにして,垂直分布図を作成する。
・洞形を測量して横断面図を作成する。
4 結果と考察
(1)海食洞の水平分布
いわき海岸の海食洞の分布は一様でなく,久の浜港,沼の内港,三崎などに集中する傾向がある。これらの地点は,いずれも海上にやや突出した岬状の地形になっている。
そして,この岬状に突出した南側の海食崖の部分に形成されている傾向がみられる。
これらの各地点における波の進む方向を航空写真や目視観測によって調べると次のようになる。
久の浜港付近 N90〜N100度
沼の内港付近 N90〜N110度
三崎付近 N130度
この結果から波は,東から南にやや寄った方向から海岸に寄せていることになり,この方向からの波を強く受ける海食崖に,海食洞ができやすいことを示している。
いわき海岸には,この東からやや南に寄った方向の波が寄せる海食崖は,上記の地点以外にもみられる。
例えば,照島海岸などはその例である。しかし,この海岸では顕著な海食洞の発達はない。
この原因として考えられることは,照島付近が多賀層群とよばれる泥質で軟かい岩石で構成されているため,浸食されると洞としてもちこたえることができずに崩落してしまうためと思われる。