理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-099/139page
・ひとつの段丘を例にとって,段丘面形成後現在までの地盤変動のようすを考察する。
狭い地域で数段の段丘が連続して観察されることが稀であるために特定の地点の段丘を手がかりとして,地盤の変動を考察し,それに地史的意義を与えることはかなりむずかしい。
これをさけるために
・かなり広い地域を対称として段丘群のようすをとらえ,その地域の地盤変動のようすを考察する。
表1 いわき市北部の段丘
段丘面 標高(m) 比高(m) 第1面
2
3
4120〜
90〜80
50〜40
2030〜40
40±
20〜30表1は,いわき市北部の段丘群のようすを示しているが,この付近の地盤の変動量と浸食基準面変動量の合計は,上位から下位に,30〜40m, 40m, 20〜30mと考えることができる。
図1は,いわき市周辺の段丘第3面と現河床との比高を調べたものである。
この図からみると西方の山地ほど比高が大きい。このことは西方の山地で隆起量が大きいことが理解できる。
また,この等比高線は連続しないところがみられる。この不連続な部分は帯状に連らなっていて,それはこの地域に発達する断層線と一致する。
このことから断層で区切られた地域ごとに,その変動量が異っていることに気づかせることができる。
図1 3面と現河床との比高
(2)段丘たい積物
いわき市南部の段丘でみられたたい積物のようすを図2に示す。
このたい積物のようすから段丘たい積物が形成された時代のようすを考察できる。
例えば,礫層を構成する礫の種類とその含有率から,浸食作用が強く作用した地域を推定したり,礫の大きさあるいは礫と砂の湿りかたなどから,たい積物の運搬されかたやたい積地の流水のエネルギーを推定したりすることができる。
また,段丘たい積物には植物・動物などの遺骸を含むことが多く,その当時の古環境を推論することもできる。
さらに,たい積物に含まれる火山灰層などを手がかりとして連続しない段丘との対比をすることができる。
〔留意点〕たい積物が露出している段丘崖は,土砂崩れ防止の工事がなされることが多いので,段丘崖をみつけたらそのようすを記録しておくことが望ましい。