理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-111/139page
成分元素の質量比は一定にならないと主張した。
2人の間で何年にもわたって激しい論争が展開された。ベルトレは銅の硫化物・鉄の酸化物の分析をし,その結果をもとに自説の正しいことを主張した。ブルーストはベルトレが例に上げた試料を十分に精製し正確に分析した。そして,酸化鉄では,酸化鉄(2)酸化鉄(3),酸化鉄(2・3)の混合物であることをつきとめ,純粋な一つの化合物ではその成分の質量比が一定であることを示した。より正確なデータを出し自説を主張したブルーストが勝利を納め,論争に終止符が打たれた。
〔実験〕 定比例の法則の検証
目的 銅を酸化して銅と化合した酸素の質量から,銅と酸素の質量比が一定になることを確認させる。
準備 ステンレス皿(直径8cm),三角架,三脚,精密はかり(直示天秤),銅粉,ガラス棒
方法
1)三角架上で約5分間強熱したのち,放冷したステンレス皿を正確に秤量する。
2)デシケ一タ中で十分に乾燥させておいた銅粉約0.5g をステンレス皿に広げ,正確に秤量する。
3)三角架上で約3分間強熱したのち放冷し,生じた酸化銅をガラス棒でよくまぜる。再び約3分間強熱したのち放冷し,かきまぜる。同操作を3〜4回繰返したのちに秤量する。
4)同じ操作を銅粉 1.0g,1.5g,2.0g で実施する。
結果
銅紛(g) 0.5 1.0 1.5 2.0 ステンレス皿(g) 19.32 19.57 19.58 19.67 ステンレス皿+銅粉(g) 19.84 20.59 21.09 21.70 ステンレス皿+酸化銅(g) 19.96 20.84 21.45 22.19 銅の質量(g) 0.52 1.02 1.51 2.03 酸素の質量(g) 0.12 0.25 0.36 0.49 Cu/O 4.3 4.1 4.2 4.1 (2)ドルトンの原子説(1808年)
問1 ドルトンの原子説は,デモクリトスの原子説とどのような点が異なるのか調べてみよう。
問2 ドルトンの原子説の成立過程はいろいろな説があるが調べてみよう。
問3 ドルトンの原子説で定比例の法則を説明してみよう。
ドルトンの原子説成立過程に定説はない。ドルトンは気象学に興味を示し,大気の性質に関心をもち,大気中の水蒸気に関する研究より気象学に関心をよせ「気象の観測と考察」において,分圧の法則の原型を発表した。
1801年「混合気体,とくに大気の組成に関する新しい理論」の中で分圧の法則を発表したが,学界で批判され,そのため自説の正しさを証明するため数多くの実験を行った。その一つに気体の溶解度に関する研究がある。その研究のなかでドルトンは,気体の水への溶解は水面にかけた圧力により気体粒子が水の中のすき間に押し込まれるためで,粒子の数が気体の種類によって異ならないとすれば,粒子の重さに比例すると考えた。この考えを証明するため,気体粒子の重さを測定する必要があり原子量の概念を導入し,1808年「化学の新体系」の中で原子説を提唱した。ドルトンの原子説と古代原子説との違いは,原子の種類を限定(ラボアジエによる元素数)としたことと,原子に原子量を与えたことである。