理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-112/139page
この原子説で,定比例の法則は明快に説明することができるようになった。
(3)倍数比例の法則(1803年)
問1 例を上げて倍数比例の法則を説明しよう。
問2 ドルトンは原子説より演繹的に倍数比例の法則を導き出したが,その過程を調べよう。
問3 ベルセリウスはどのような実験より倍数の比例の法則を導き出したか調べてみよう。
ドルトンは自分の原子説の正しいことを確信していた。当時,2種の元素より成り2種以上の異なる化合物の存在が知られていた。ドルトンは成分元素が同じで異なる化合物は,成分元素の原子数の違いのためであると推論した。炭素と酸素の化合物である酸化炭素○●と炭酸ガス○●○において炭素●の重量を一定にした場合,酸化炭素と炭酸ガスにおける酸素の重量比は○:○○で1:2となるはずであると予想した。実際に酸化炭素と炭酸ガスを分析し,炭素1に対し酸化炭素と炭酸ガスにおける酸素の重量比が1:2の結果を得,予想が裏打ちされた。また,亜酸化窒素と酸化窒素,メタンとエチレンについても分析し予想通りの結果を得,自分の原子説の正しいことを証明する証拠として,この倍数比例の法則を提出した。
ドルトンはあまり実験せずに,原子説より演繹的に倍数比例の法則を導き出したのに対し,ベルセリウスは数多くの化合物を精密に分析し,帰納的に倍数比例の法則を導き出し,ドルトンの原子説に実験的証明を加え,理論の発展に貢献した。
〔実験〕 倍数比例の法則の検証
目的 塩化銅(1)と塩化銅(2)の溶液より銅を析出させ,一定量の銅と化合していた塩素を求め,その間に簡単な整数比が成立することを確認させる。
準備 無水塩化銅(1),無水塩化銅(2),デシケータ,ビーカー(100ml) 2個,三脚,石綿付金網,ガラス棒,アルミ板,秤量びん2個,時計皿2枚
方法
1)無水塩化銅(1),無水塩化銅(2)を入れた秤量びんをデシケータ中に入れておく。
2)時計皿2枚と1)の秤量びんの質量をそれぞれ正確に測定する。
3)無水塩化銅(1),無水塩化銅(2)を秤量びんから約2〜4g ビーカーにそれぞれとり,残りの試薬が入った秤量びんの質量を正確に測定する。
4)無水塩化銅(1),無水塩化銅(2)の入ったビーカーに純水約30ml 加えて溶かす。塩化銅(1)はほとんど溶けない。
5)アルミニウム板を 0.5×15cm の大きさに切り,それをうず巻状の形にして各々の溶液に入れる。塩化銅の方はほとんど反応しないので加熱沸騰させる。
6)反応終了後,アルミニウムの表面についている銅をガラス棒で落し,残ったアルミニウムを液からとり出す。
7) 6)の液を捨て, 6M−HC1 を加えて未反応のアルミニウムを反応させる。生成した銅を4〜5回水で洗い時計皿にあける。それを定温乾燥器に入れて約100℃で乾燥させる。
8)乾燥させた銅を時計皿ごと正確にその質量を測定する。