理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-122/139page
ヘルモントは,当時まで盛んであった錬金術学派に属していた学者であり,水という元素(現在の元素とは異なる)から,ヤナギの増加量がもたらされたと考えても無理からぬことであった。聖書にも「水が万物の創造に先立って作られた」とあり,元素(万物を作るもとになるもの)は水であるとも考えられていた。しかし,その考え方はまったくのまちがいではなく,一部は現在でもあてはまる。当時の自然発生の考え方が一般に信じられていた時代に,植物の成長要因としての水の存在を明らかにしたことは高く評価されるし,その実験は非常に卓越したものであった。
この研究はヘールズとソシュールによって受けつがれ,植物の成長には水が必要であることが確められている。
(2)酸素の発生
ヘルモントの実験後約30年をへて,彼が考えなかった植物の成長と空気との関係について,ヘールズは植物の成長に空気が関係していることを明らかにした。この頃,化学の研究も発展し,空気の成分が研究され,プリストリーによって,植物は呼吸や有機物の燃焼を助ける気体を発生することが発見された。
ファン=ヘルモントのヤナギの成長実験(1648)
ヤナギの若木 5ポンド(2.27kg)
土の乾燥重量 200ポンド(90.72kg)
↓
5年後 ヤナギ 169.3ポンド(76.79kg)
土の乾燥重量 199.14ポンド(90.33kg)
ヘルモンドは空気中の CO2 の重要性に気づかず,土の減りかたが少ないことから,水が植物体に変化すると考えた。
プリストリーの実験(1772)
燃えているローソクの入ったガラス鐘にネズミを入れる。しばらくしてローソクの火が消え,ネズミも死んでしまった。しかし植物(ハッカ)の葉のついた小枝をガラス鐘に入れ,同じ実験を行ってみると,ローソクの火は消えずネズミも死ななかった。
(問) ガラス鐘内に燃えているローソクを入れると炎が消えてしまう。植物を入れていると消えない。植物はどんなはたらきをしたのだろうか。
(問) ネズミと植物を入れると,ネズミは死なない。植物から発生してくると考えられる物質はどのようなはたらきをするものと考えられるか。
プリストリーの実験模式図
ネズミのみのとき死ぬ。←ガラス鐘→ハッカ植物を入れる。死なない。
ローソクのみのとき消える。←ガラス鐘→ハッカ植物を入れる。消えない。