理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-124/139page
ソシュールの実験(1804)
1)植物(テンニンカ)を7本入れ,7.5%の CO2 を含む人工空気を充たした密閉容器を6日間5時〜11時まで直射日光をあて,7日目に容器内の空気組成を調べた。
成分 実験前 実験後 増減 N2 4,199ml 4,388ml +139mg O2 1,116 1,408 +292 CO2 431 0 −431 計 5,746 5,746 ±0
植物体の炭素量 実験前 528mg 実験後 649 増減 +121
2)蒸留水を入れたガラス鐘内に数本ハッカを入れる。約2ヶ月半日光にあてた。実験前後における全体重量,乾燥重量,炭素重量の増減を調べた。
実験前 実験後 増減 全体重量 100 216 +116 乾燥重量 40.29 62 +21.71 炭素重量 10.96 15.78 +4.28 ・この植物は 431ml の CO2 を利用したか又は失わせたのである。
・植物は, 431ml のうち 292ml は分解して O2 にし,残りの 139ml は同化して N2 にした。
・植物体の炭素量の増加は,吸収した CO2 に含まれていた炭素である。
・植物体の成長には, CO2 と H2O の両方が必要である。
(問) この実験はどんな目的で行われたか。
(問) ソシュールの結論の正否を考えてみよ。
ソシュールの実験結果から
結論がすべて正しいかどうか問題もあるが,光が当っている時の緑色植物の重量増加は,吸収された CO2 量よりも多いことを見出し,植物体の成長には,H2O と CO2 の両方が必要であることを確認した実験であった。
この発見はテールによる腐植質説(1792)―植物体は腐植土から有機物を吸収し成長する―という学問的には逆行した考え方を根本的に否定するものであった。
植物体を構成している有機化合物の炭素源について,腐植質説のまちがいは,その後ブツサンゴーの砂耕法で実証され,更にザックス(1857)が,またクノープ(1859)が水耕法を考え,腐植質説は完全に否定された。
(5)光の存在と同化産物の確認
光合成に光が必要なことは,インゲンハウスによって発見されたが,その必要性についての理論的説明は,エネルギー保存の法則を発見したマイヤーによって与えられた。彼は光合成における光の存在は,そのエネルギーが必要なので,植物体はそれを化学的エネルギーに変えて植物体を構成する有機化合物