先端技術をとり入れた理科(物理領域)に関する教材・教具-003/47page

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現されない一種のポテンシャルエネルギーを持っているということである。
 しかし、この時期を過ぎると並び方にも乱れが生じて、ちょっと違ったものが入りこんでいることがわかり、学級の雰囲気が変わってきたことに気付く。筆者はこれを格子欠陥(登校拒否)不純物(非行)と呼んでいた。始めは、これらの生徒がいることを迷惑であると考えていたが、後に有難いことだ、と思わなければならないことに気付いたものだ。今、物性物理学の世界では、半導体の研究が力をもち、この特有な性質が、たいてい不純物によって現われることを知っていたからであった。また、研究者にとって、材料をたくさん提供してくれるのに、邪魔扱いするのは具合いが悪いことでもある。ちなみに、量子化学では、本来の結晶をホストといい、不純物をゲストというそうである。ゲストは歓迎されなければならない。こう書くと、俗に言う“お客さま”と思われる方があるかも知れない。ここで言うゲストは、ホストとの間で有用な作用をするということである。
 学習不適応の生徒をゲストとして見ると、それなりのエネルギーをもっている。もともと、エネルギーそのものは方向性をもたない。このエネルギーが、生徒という容器に入り切れなくなったときに小穴から噴き出し、他に対して仕事をする。その行動が社会的に好ましからざるものであったと見るべきであろう。
 すなわち、このエネルギーをどのような形でとり出すかが教育である、と考えるのである。教育は、ある方向をもつベクトルであると考えるわけである。そして、そのベクトルを操作により増大させ、新たなベクトルの内積を作り出す作業であると考えるのである。
 教育研究に見られるモデルとして、1)らせん構造モデル、2)階段モデル、3)分子モデル的な学習構造モデルが多く示される。その意図するところについて、1)は学習者の自然的欲求……〔広い空間を自由に動きまわりたい。…安定した位置(エネルギーが最小になれる位置)にいて、余分なエネルギーを使わず静かにしていたい。〕に逆らって学習者に仕事をし、学習者のエネルギーを高めてやるという願いをこめている。生徒を学習目標まで直線的に到達させるのではなく、種々の学習要素を身につけさせながら到達させることが考えられている。
サイクロトロン型学習理論による教材・教具の位置


 筆者は、物質の平衡状態は、エントロピー及び重力、電気力、磁気力などのバランス(ポテンシャルエネルギーが最も小さい)によって決まっている事から、考察を進めた


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