平成9年度学力到達度調査研究-043/62page
(6) 授業改善に向けて
数学科の目標は,基礎的な概念や原理・法則を理解すること,数学的な表現や思考.処理に関する能力を高めること,数学的な見方や考え方のよさを知り,それらを進んで活用する態度を育成することである。この目標を達成するために,数学の授業では,主体的な学習活動が展開できる問題解決学習を推進していくことや,個に応じた多様な指導方法を工夫し,生徒の立場に立った学習指導の改善や充実を図っていくことが必要である。
今回の調査では,次の4つの中領域が全国比90未満であることが明らかになった。
1次関数 (85) (大領域「数量関係」)
図形の相似 (87) (大領域「図形」)
平行線の性質や三角形の合同など (87) (大領域「図形」)
数の表現方法と数の適切な使用 (88) (大領域「数量関係」)
中学校数学は,小学校からの学習内容を発展させ,演鐸を中心に論理が体系化していく高等学校数学への橋渡しとなる段階である。中学生は,一般的には論理的・抽象的思考が発達してくる段階にあるが,この発達に加えて到達度の個人差が大きくなってくる時期でもある。中学校においては,小学校からの教材の系統性と高等学校への発展を考慮し,教材のもつ意義をとらえることが大切である。また,生徒一人一人の個人差をとらえ,数学の世界をより具体性のあるものと関連させたり,より発展的に考えさせたりするなど,一人一人の学びに応じた,きめ細かな指導が必要である。
そこで,ここでは「1次関数」と「図形の相似」の中領域から,全国比が低い小問を例にとり,考察し,その領域に関する指導の要点を述べる。
1) 「1次関数」の指導
ア 小間例「1次関数である事象」(平成7年度全国比57,平成9年度全国比71)
次のア〜オの中から,yがxの1次関数であるものをすべて選びなさい。
ア 800mの道のりを毎分xmの速さで歩くとy分かかる。
イ 体重がxkgの人の身長はycmである。
ウ 1辺xcmの正方形の面積はycm2である。
エ 上底が2cm,下底がxcm,高さが4cmの台形の面積はycm2である。
オ 空の水そうに毎分3Lの水を入れると,x分後にyLになる。
イ 考察
小問例の全国比は,前回と比べ14ポイント上昇しているが,全国比71と低く,生徒にとって難しい問題であることが分かる。この問題に関連した調査結果が【資料1】である。