平成9年度学力到達度調査研究-044/62page
【資料1】 (「平成8年度調査」より)
Aさんは家から福島駅まで,一定の速さで歩いています。Aさんが家を出発してから2分後に「駅まで800m」,6分後には「駅まで500m」の地点を通りすぎました。次の問に答えなさい。
1 Aさんが歩く速さは,1分間に何mですか。
2 Aさんが家を出発してからx分後の駅までの距離をymとして,yをxの式で表しなさい。
小問 解答分類 解答率(%) 正答 誤答 1 速さ時間距離の関係 64.1 10.1 その他 0 18.2 無解答 - 7.6 計 64.1 35.9 2 駅までの距離を求めて 21.2 3.0 対応関係より 3.0 0 比例と認識 - 31.3 その他 0 14.1 無解答 - 27.4 計 24.2 75.8
【資料1】の2の解答分類を見ると,「比例と認識」した誤りや「その他」(解答を導き出した根拠が明らかでないもの),「無解答」の生徒を合わせると72.8%になる。特に,「比例と認識」した誤りの31.3%の生徒は,1次関数の式をy=axという比例の式とみなしている。このことから,比例を1次関数の特別な場合としてとらえさせ,あわせて「1次」の意味をふくめた1次関数の概念を正しく理解させる必要がある。
1次関数の指導においては,具体的な事象の中から,伴って変わる2つの数量を取り出し,それらの間にどのような関数関係があるか,どのような式で表されるかなどについて,生徒のイメージ化が図れるよう配慮していく必要がある。また,今後学習する高次関数との関連からも,「変化の割合が一定である」という1次関数の特徴を十分に意識づける指導が大切である。
ウ 指導の要点
○ 図などの関連により,1次関数の式を理解させよう
一般に1次関数の指導は,式の形で定義し,その後に対応表,グラフとの関連性を図るように進められることが多い。その過程で1次関数の概念を正しく理解させる工夫が大切である。特に,抽象化された式の持つ意味を生徒がイメージしやすくする工夫をしていきたい。
ここでは,具体的に,水そうに水を入れる例について述べる。伴って変わる2変量が何であるか,その依存関係はどうなっているかを考えさせた上で,【資料2】のように図と関連させてみると,1次関数の式がイメージしやすくなる。また,線分図に表す方法により,2量の関係がとらえやすくなるなどの,生徒自身が解決の手がかりを得られるような指導の工夫が大切である。