実践のための学校教育相談ハンドブック-036/083page
2 ムカつく・キレる 〜抑えきれない衝動と耐性のなさ〜 (1) 抑えきれない衝動と耐性のなさ
中学生や高校生が攻撃的な感情をむき出しにして,面識のない人を殺傷する事件が相次いでいます。一方,このような事件には至らないものの,衝動のコントロールができないため,周囲にその不平不満を爆発させるケースが,日常の様々な場面で見かけられます。小学校低学年の児童でさえ,簡単に「ムカつく」「キレた」と口にします。こうした現象からも,いかに多くの児童生徒が,常時,欲求不満の状態にあり,耐性が育っていないかを知ることができます。
これらの児童生徒は,幼いころから自分の気持ちを受け入れられた体験が少なく,ストレスを満杯にしていることが多いようです。そのため,ささいなことでも過剰に反応し,拒否されていると思い込み,他者への不安感を増大させています。
(2) ムカつき,キレる児童生徒への対応
ムカつき,キレる児童生徒は,「怒り」の感情をもっています。この怒りは,理由も聴かずにいきなり叱責されたり,気持ちを聴いてもらえなかったりする場合に顕著に現れるようです。大切なことは,言動の裏側にある,「わかってほしい」「受け止めてほしい」という願いを的確にキャッチし,もやもやした気持ちや葛藤をじっくりと聴いていくことです。
他者に対する基本的な信頼感が乏しく,人とのかかわりに不安をもつ彼らは,キレることで他者との関係や自己の存在を確認しています。怒りを爆発させてしまった時は腕力等で抑え込むのではなく,できるかぎり落ち着いて対応し,一旦本人を静かな場所に移すなど状況を変えることが必要です。そして,十分に冷静さを取り戻した後に言動を振り返らせ,やってはいけないことやルールについて一緒に考え,本人の新たな気付きを促します。
ふだんから児童生徒の自己表現や心の交流を図る場を大切にし,教師から明るいあいさつや温かな言葉かけを行うなど,プラスのストローク(児童生徒の存在を認める行為)を与えるようにかかわりたいものです。