実践のための学校教育相談ハンドブック-037/083page
3 学業不振 〜諸問題の根源となるもの〜 (1) 諸問題の根源となるもの
学業成績が振るわない児童生徒の多くは,授業中ぼうっとしていたり,落ち着きがなく,活動や作業が長続きしなかったりします。また,提出物や準備物の忘れが目立つなど意欲がないように見られがちです。
しかし,怠けや注意力,集中力の問題として片付けてしまわず,根気よく本人の内面にかかわっていくと,それまで見えなかった友達・教師・家族との人間関係など,様々な悩みや不安を抱えていることがわかってきます。また,級友や仲間の前で自尊心を傷つけられた体験から,何をやっても自分はだめだという強い自己否定感情をもっている場合もあります。
したがって,このような児童生徒には厳しい指導や叱責はあまり効果的ではありません。ちょっとしたつまずきや失敗に対する周囲の嘲笑やからかいがきっかけとなって,非行やいじめ,不登校といった不適応行動へと発展することのないように,彼らの置かれた立場や心理的状況を受け止めていく必要があります。
(2) 学業不振の児童生徒への対応
学業不振の児童生徒は,「わからない・できない」といったコンプレックスをもっています。小学生では,「□□の授業があるから学校へ行きたくない」と考える児童もいます。初めはこのような心情に寄り添い,その気持ちを丁寧に聴いていきます。そして,「わかるようになりたい・できるようになりたい」という思いを受け止めることで,信頼関係を築いていきます。やがて,彼らは今できることやできそうなところを見付け,取り組むようになります。その時,できたところは十分に褒め,努力したことは認めてあげるといったかかわりをします。
こうした過程を通して学習に対する意欲付けを図りながら,次第に彼らが自分にあった進め方を見い出していくことができるように指導援助を行います。その際,当該児童生徒はどの段階で学習につまずいているかを把握し,その児童生徒の特性や学習進度に応じた内容・方法を検討することがポイントになります。