実践のための学校教育相談ハンドブック-049/083page
11 性非行 〜心の支え,よりどころのなさ〜 (1) 心の支え,よりどころのなさ
女子生徒が,『遊ぶ金欲しさ』から気軽にアルバイト感覚で援助交際をしたり,親に愛された経験の少ない少年少女が不特定多数の異性と安易に性的関係をもったりする事例が起こるようになりました。普通の高校生でも,1〜2回の性体験をもっている割合が増加しているというショッキングな調査報告もあります。
中・高校生による性非行は,まるで流行のファッションのような軽い感じで行われているのが特徴です。しかし,このような一過性の行為でも,回数が重なるにつれて本人の人格形成に歪みをもたらし,性病感染や凶悪な事件に巻き込まれる危険性があります。
性非行は,『身体的な早熟化と精神的発達とのアンバランス』等によって引き起こされますが,一度こうした刹那的な快楽に溺れ,性的な依存関係に浸ってしまうと,なかなかそこから抜け出すことができなくなります。寂しさや心のよりどころのなさが,いつしか本能的に快楽を求める欲求へと姿を変え,心身を蝕むからです。
(2) 性非行からの脱却
本人と何度話し合いの場をもっても,同じことを繰り返すだけで,指導をすればするほど,彼(彼女)らの気持ちがますます離れてしまうことがあります。親や教師からの叱責が度重なり,かたくなに心を閉ざしてしまうことが大きな要因と考えられます。こうしたケースでは,まず,彼らの心にある孤独感やもろさ,あいまいさに寄り添った温かなかかわりが必要です。やさしさや愛情に飢えながら,素直になれず,突っ張ってしまう不安定さをあるがままに受け止め,じっくり話を聴きます。そして,「大切な自分・大切な命」に気付いていくように援助します。
親や家族とも連携を図り,本人へのかかわり方や見方に新たな面を発見し,将来への展望が開けるように援助します。父親の存在・役割が薄いときは,父親との懇談を実施し,状況によってはまず両親が揃って専門機関のカウンセリングを受けることなどを提案することも重要なかかわりといえるでしょう。