実践のための学校教育相談ハンドブック-056/083page
2 学習障害(Leaming Disabilities)
〜得意・不得意のギャップが大きい〜(1) 学習障害(LD)とは
「学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は,その原因として,脳に何らかの機能障害があると推定され,視覚,聴覚,知的,情緒等の障害や,環境的な要因が直接の原因となるものではない。」と定義されています。(文部省.学習障害児に対する指導について.1999年)
学習障害(LD)児は,その状態から「勉強ができない子」と思われがちですが,目を見張るようなひらめきやアイデアで周囲の人々を驚かせることもあります。また,得意・不得意の極端なギャップがあるため,「これはよくできるのに,なぜ,あれができないのか?」と,本人は努力しているのに周りから,「怠けている」と誤解されがちです。それが積み重なると,本人は「どうせうまくいかないから」と自信をなくす結果になります。
このような事態は・家庭のしつけや本人の努力不足のためでもなく,上で述べたような原因のためです。なお,学習障害の診断は,認知・学習面のプロフィールで扱われ,次にある注意欠陥多動性障害(ADHD)は,行動面のプロフィールで扱われることから,この両方が併記して診断されることがあります。
(2) 本当に困っているのはだれ?
だれより困っているのは,学習障害(LD)児本人です。学習障害(LD)児は,知的発達に遅れがないゆえに,「自分はみんなと違って何か変?」という気持ちになりがちで,心因的・情緒的な問題を派生する危険性を持っています。また,そのことから無気力・引っ込み思案・反抗的行動を起こす場合もあります。教師は学習障害(LD)児の特性や学習障害(LD)児が困っていることに対して,十分理解し,慎重なかかわりをすることが大切です。