実践のための学校教育相談ハンドブック-058/083page
3 注意欠陥/多動性障害
(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
〜落ち着きがなく気が散りやすい〜(1) ADHDとは
最近,教育界でよく話題になっていることにADHDがあります。米国精神医学会の精神疾患の分類と診断の手引第4版(DSM-W)での診断基準によると,「一種の状態像であり,病気ではない」ということです。ADHDは脳に何らかの障害があって起こると考えられていますが,詳しい原因はまだわかっていません。
特徴的な行動パターンとしては,以下の3つです。
不注意 一つのことに集中できずに次々と関心が移る子供(遊びや学習で不注意なミスが多い。忘れ物が多い。学用品などの物をなくす。)
多動性 落ち着きのない子供(じっとしていられずに勝手に席を離れたりする。着席していても私語をし,後ろや横を向いたり,よく手足を動かしたりする。動き回ったり,走り回ったり,高い所に登ったりする。)
衝動性 ちょっとしたことで興奮し行動する子供(かんしゃくをおこしたりする。自分からけんかをしやすい。物をこわしたりする。勝手に会話やゲームに割り込んだりする。自分の気が済まないと泣きわめいたりする。突然,危険な行動をとったりする。)
これらの行動は重複したり,一つの行動が連続したりする場合もあります。
(2) ADHDの判断
単に,落ち着きがないというだけでは,勝手にADHDだと判断することはできません。ADHDの診断は,専門医により,上記に示したような行動面での状態に焦点を当てながら医学的・心理学的諸検査などにより行われます。学校や家庭で,もしかしたらあの子もADHDかも?と考えてみることは大切なことですが,誤った判断から子供にレッテルを貼るようなことにならないような慎重さが必要です。