実践のための学校教育相談ハンドブック-060/083page
4 自閉症 〜変化に弱くこだわりが強い〜 (1) 自閉症とは
自閉症の子供には,「視線が合わない」「こだわりが強い」「他の子供にうまくとけ込めない」などの行動が見られます。特に,普通の人と認知の仕方が違い,言わなくてもわかっているはずの暗黙の了解事項が理解できないため,コミュニケーションがうまくとれずに対人関係で困難さを覚えます。
また,状況や相手の気持ちを理解できず,慣れない場面では大変不安を感じ,混乱します。発達のアンバランスがかなり大きく,優れた認知能力(時刻表やカレンダーの記憶力のよさ,ジグソーパズルが得意,音楽の才能など)を持っていることもあります。自閉症は,脳の障害によるもので,親の育て方が悪いのではないということがわかっています。
自閉症は,3歳以前から始まり発達段階によって様々な特有の症状が見られます。教師は,親が早期に医療機関や専門機関に相談して,援助の手だてがわかり,子供に適切なかかわりができるよう支援していくことが大切です。
(2) 障害の特性に配慮した個別の対応
自閉症の子供には,見通しを持たせる手だてが有効です。活動の始めと終わり,量と内容,終わったら次は何をするのか(いつ,どこで,なにを,どれくらい,いつまで,どのようなやり方で)の見通しなどを教え,示す必要があります。とくに,視覚的認知の優れている子供にあっては,実物,絵,写真,文字などで教えると効果的です。
米国のショプラーが提唱したTEACCH(ティーチ)プログラムでは,対象となる一人一人に合わせた個別の対応で自立生活に近付けることを目指しています。具体的には,本人の将来を見据えて,早い時期からやらなければならないのは, 自立性の獲得 (自分のことは自分でやること,一人でできることを増やすこと)と コミュニケーションスキルの獲得 (使えるコミュニケーション手段を身に付けること)そして, 余暇スキル (一人で自由時間をすごすこと)等であるとしています。