実践のための学校教育相談ハンドブック-068/083page
(4) 対人恐怖 〜思い込み〜
中学生や高校生に見られる対人恐怖は,自分が周囲の人に不快な感じを与えたり,周囲の人から非難・軽蔑されたりしていると思い込み,消極的で引きこもりがちな生活になります。不登校の生徒の中には,対人恐怖のために集団の中に入れず苦しんでいる者もいます。
思春期は,自我に目覚め,自意識が強くなると同時に,他人を強く意識するようになります。そうした中で対人関係の苦手な生徒は,ストレスをため対人恐怖に陥ることがあります。これは,思春期に見られる心の特徴の一つで病気とは異なります。
対人恐怖の中には,自己臭恐怖,視線恐怖,醜形恐怖などがあります。
自己臭恐怖の生徒は,身体から嫌なにおい(口臭,ワキガなど)が発散して周囲の人に不快な感じを与えていると思い込み,教室に入れなくなったり,引きこもったりしてしまいます。
視線恐怖の生徒は,他人の視線が気になったり,自分の視線が他人に不快な感じを与えていると思い込んだりします。そのため,対人関係が作れないことを自覚し,自覚すればするほど苦しくなります。
醜形恐怖の生徒は,自分の顔の一部(目,鼻,ほおなど)や体が醜いので,他人に嫌われていると主張します。
親や教師や友人は,本人の訴えを受けとめながら,その都度周囲の人には迷惑をかけていないことを伝えてやることが大切です。神経質で繊細な感受性を持ち,非常に傷つきやすい状態になっていることも心にとめておきたいものです。対人恐怖は,本人の成長とともに自然に改善されることもありますが,程度が重い時には,専門医に相談してみることを勧めます。その際,本人の受診には抵抗が予想されますので,十分に配慮して対応することが必要です。