実践のための学校教育相談ハンドブック-072/083page
<発 刊 に 寄 せ て>
学校教育相談体制づくりのために
福島大学教育学部附属教育実践総合センター教授 中 野 明 徳
この度,「実践のための学校教育相談ハンドブック」が刊行されることになりました。私も読ませていただき,内容は多岐に渡り,しかもとても充実していると思いました。しかし一方で,一抹の不安が私の脳裏をよぎりました。はたしてこの立派な本を現場で利用していただけるのであろうか,と。私は4年前から福島大学教育学部に勤務することになり,学校関係者とのつきあいがとても増え,しかもスクールカウンセラーとしても学校に関わっている立場にあります。スクールカウンセリングの成否は,学校内にスクールカウンセラーのパートナーがいるかどうかが決定的です。パートナーは学校でまちまちですが,生徒指導担当者であったり,教頭であったりします。
この人がスクールカウンセラーと担任教師との間をつないでくださると実に効果的です。もし,パートナーが教育相談部という組織であれば強力でしょう。教育相談部の一員にスクールカウンセラーがいることが理想です。もし,校内の教育相談係になった時どうしたらよいのでしょうか。
そのコツは逆転の発想です。@集団教育から個別支援へ(教えるから育てるへ),A計画的な教育からその場しのぎへ(テキストからの脱却),B急ぎ足から時間稼ぎへ(急がば回れ),C自己愛からチーム依存へ(孤立を避けよ),D教え上手から教えられ上手へ(児童生徒から学べ),等々。
これらを実践することに抵抗が少ない方は,きっと臨床の醍醐味を味わうことができるでしょう。しかし教育相談に不安を感じる方は,このハンドブックをいつも小脇に抱えて熟読してください。そして,自分なりの加筆修正を常に思いめぐらしてください。そうすれば,いつか,あなただけのオリジナルなハンドブックが出来上がることでしょう。
(学校教育相談運営講座講師,公立中学校スクールカウンセラー)